プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

2017-01-01から1年間の記事一覧

小澤征爾さんと、音楽について話をする (新潮文庫)  雑感

単行本発売時から気になっていた本書、書店で文庫を見かけたのでようやく手に取ってみた。 タイトル通り村上春樹と小澤征爾の対談集である。小澤の師匠カラヤンをはじめグレン・グールド、バーンスタインといった深く関わり合った音楽の巨人たち、またベルリ…

忙しいと釣りについて考えたくなる。

忙しいと釣りについて考えたくなる。なぜだろうと思う。夢の中にも釣りが出てくる。釣れなくて苦しい。うんうん唸っていると目が覚めるのだ。 フライフィッシングを始めた頃、何気に洋書(アメリカ)の入門書を買ってみた。ちょうど今みたいな繁忙期に仕事…

「ムーミンパパの思い出」再読

映画「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」が公開されたり、仕事場に近い銀座松屋でムーミンのチャリティ・ピンバッジが頒布されていたりと、今冬はなにかとムーミンを意識することが多かった。で、久しぶりに手に取ったのが「ムーミンパパの思い出」。…

葛西善蔵と酒が飲みたい。

先日、むかし部下だった男から電話があった。お互い前後して会社を辞めたので10年以上会っていない。要は、僕と飲みたい、昔迷惑かけたことをいろいろ反省してる…という趣旨なんだが、なぜ今電話してきたかよくわからない。おそらく本人にもわからないのだろ…

丘を越えて 〜『嵐が丘』と前世の記憶

嵐が丘 (新潮文庫) 「エレン、あとどれくらいしたら、わたし、あの丘のてっぺんまで行けるようになる? 丘の向こう側にはなにがあるのかなあ──海?」 「違いますよ、キャシー嬢ちゃん」あたしは答えたものです。「これとおなじような丘が連なっているんです…

高峰秀子著『いっぴきの虫』雑感 〜類い希なる人間観察眼と文才を有する著者による出色の人物批評

〝近年、外交問題や爆買い騒動などによって中国人の一般的な印象はあまり良くない。根拠なく日本人を上に見る風潮があるような気がするが、多くの日本人は本書の「趙丹」およびやはり中国人の真心について語る「杉村春子」の章を読んで、ほんものの中国人の…

失われた名盤②『TALK ABOUT THE WEATHER 』 RED LORRY YELLOW LORRY

TALK ABOUT THE WEATHER RED LORRY YELLOW LORRY 英国・リーズ出身のゴス/ポジティヴ・パンク・バンドの1stアルバム(1985)。グループ名は「赤いタンクローリー、黄色いタンクローリー」という英語の早口言葉で、日本語で言えば「赤巻紙、黄巻紙」なんだろ…

ポール・マッカートニー関西人説

10年ほど前にビートルズのLet It Beを関西弁に訳してブログに載せたら、ちょっと反響がありまして、それを再掲してみます。ネイティブな方にはやや違和感あるかも。 ------------------------------------------------------------------------------- 「そ…

「日本も、けさから、違う日本になったのだ」

久しぶりに政治の話をする。 先の衆院選において、何人かの(リベラルな)純文学作家の方々が反アベ政権の立場から発言していて、ことごとく幼稚かつ的外れで呆れた。文学の言葉が現実への影響力を失って久しいが、その自覚がないままに現実を語る言葉の浅薄…

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (後編)

(中編からつづく) 楽しい宴会の途中でとんでもないことに気付いた。「寝袋持ってくるの忘れた」。バックパックに荷物詰める際、「今回はどの寝袋にしようか?」と考えていいて、結論を出さないまま荷造り終了してしまったのだ。マヌケである。しかし、この…

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (中編)

(前編から続く) 秩父フライフィールドは管理釣り場だ。管理釣り場とは平たく言えば釣り堀である。しかし、この釣り場は自然渓流をほぼそのまま使っている。ポイントにも変化があり、魚の密度が桁違いに濃いことを除けば、いわゆる渓流釣り気分で楽しく遡行…

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (前編)

秩父漁協の駐車場から浦山ダムを眺める。右手崖下の浦山川がフライエリア 先週の土曜日・日曜日は、半年ぶりに秩父フライフィールドで「キャンプデー」に参加した。渓流は禁漁期だが、このフライエリアは漁協管轄の管理釣り場【毛鉤&キャッチ&リリース限定…

カズオ・イシグロ、翻訳、J・D・サリンジャー

カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞して、ファンとしては喜ばしい。で、昨日、イシグロ作品の原文について、海外生活が長く英語に堪能な二人の知り合いの方がそれぞれ「読みやすい」と「読みにくい」と正反対のことを言ってたのが面白かった。原作…

脳内遊戯

おれたち一緒に、こんな脳内遊戯にふけっている。 バリアを押しやり、種を蒔いてる。 やっているのは脳内ゲリラ。 マントラとなえりゃ、この世は平和さ。 (ジョン・レノン『マインド・ゲームス』拙訳) ジョン・レノンの凄さは、たとえ心の遊戯=妄想さえも…

9・11とボブ・ディラン

今日は9月11日である。昨夜の地震を、すわ仮想敵国のミサイルか….と飛び起きた私であるが、それがどうした、である。 2001年の今日、ボブ・ディランが新作「ラブ・アンド・セフト」を発売し、それが暢気な純音楽的作品であり、ニール・ヤングとか他のミュー…

ミカドの肖像

天皇家の戦後は、皇太子の訪欧(昭和28年3月~10月)、そして浩宮の留学と英国詣でがつづいている。欧米からみると、裕仁以来の天皇家の欧化は彼らの安全保障にとって好ましいものと判断されてきた。 ある意味では天皇家自身も、京都に閉じ籠もる方策の別の…

シンプル・マン

まだガキだった頃、ママにこう言われたのさ。 「私の横におすわり。そしてよくお聞き、かわいい坊や。 これから私が言うことをしっかり聞いて、守りさえすれば きっと明るい明日がまっているはずよ。 自分の時間を大切にしなさい。焦ってはダメ。 トラブルは…

失われた名盤① 『創世記(From Genesis to Revelation)』 Genesis

個人的な名盤について語るコーナーを突発的に始めます。 第1回目は『創世記』(From Genesis to Revelation)。 Amazon CAPTCHA 夏の疲れが出てきた頃に聞きたくなるのが、このジェネシスのファーストアルバムです。しかし、彼らの歴史の中では初めてプログ…

8月15日はほんとうに〝終戦の日〟なのか?

社説|終戦記念日/英知結集して平和築く力に | 河北新報オンラインニュース (8月17日注:最初にリンクしたNHKの世論調査記事が削除されてしまったので、その記事に言及している河北新報の記事に差し替えました)中高年の人々は「最近の若者は終戦記念日も…

Season of the Insects

ファーブルは高齢になると年金による収入がなく生活は極貧であったと言われている。昆虫記ほか科学啓蒙書の売れ行きもさっぱりであった。85歳を超えたファーブルは健康を損なう事や、横になる事が多くなる。そしてヨーロッパ全土にファーブルを救えという運…

ポドルスキの活躍を見て2006年ドイツ・ワールドカップと中田英のことを考えていた

こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生死と何変わることはない。ただ、人の生死に意味や価値があるかのような言説が、人の世に行われてきただけだ。従ってこう…

『ポーの一族 春の夢』雑感。

ポーの一族 ~春の夢~ (フラワーコミックススペシャル) 萩尾先生は本気だ。 40年前、紅蓮の炎の中に消えた主人公たちとともに、完全に終焉を迎えたと思われていた『ポーの一族』の物語。昨年、40年ぶりの新作が掲載された雑誌がたちまち完売してしまった騒動…

『ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件』 (スキップ・ホランズワース)雑感

ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件 本書は「ミッドナイト・アサシン」と呼ばれる100年以上前に米国で起こった未解決の連続殺人犯を追うドキュメンタリーである。僕は知らない街を歩いていて、モニュメントや石碑があるとつい立…

ウルトラセブンと玉川学園

先日仕事で玉川学園を訪れた。創立者自ら鍬を持って山と雑木林を切りひらいたというキャンパスは、最近では話題のテレビドラマ「やすらぎの郷」のロケ地にも使われており、多彩でユニークな造作の校舎と生い茂る雑木林の豊かな緑でちょっと散歩するのも楽し…

現実の上空2mよりの落下。

モンドがどこから来たのか、誰にも言えなかったに違いない。ある日たまたま、誰も気がつかないうちにここ、私たちの町にやって来て、やがて人々は彼のいるのに慣れたのだった。 (J・M・G・ル・クレジオ『モンド』豊崎光一/佐藤領時訳 冒頭部) このように…

夏がくれば思い出す。死について断片的に。

幼い頃は人の手のことをいろいろ知っているものだ。手というものはいつも背の高さあたりにふらふら住んでいるからだ。マドモワゼルは気持ち悪い手をしていた。 (ウラジミール・ナボコフ『ナボコフの1ダース』より「マドモワゼルO」中西秀男訳) 前回の続き…

ビートルズ来日後、妹の死により家族は分解し、ポールの才能が爆発した。

道路でやっちまおうぜ。誰も見てないし。道路の上でやっちまおうよ。 Why Don't We Do It In The Road - Paul McCartney w/ Neil Young @ Desert Trip, Coachella, 10-15-16 昨年はビートルズ来日50周年だった。シェイスタジアムのライブ盤もCD化・映画化さ…

『ローマ法王になる日まで』を見たよ。

禁教となった日本でのイエズス会士の葛藤と悲劇を描いたスコセッシの『沈黙』を見てから4ヶ月。今度は初のイエズス会出身の現ローマ教皇フランシスコの若き日を描いた『ローマ法王になる日まで』を見に行った。 フランシスコは開明的なPopeとして、ローマ教…

『タモリと戦後ニッポン 』(講談社現代新書) 雑感 〜〝幻想の満州〟から戦後ニッポンを嗤う〜

本書はタモリの足跡を通して 戦後ニッポンの歩みを振り返るというものである。 なぜ、タモリを軸としたのか。 それはまず何より、彼が一九四五年八月二二日と 終戦のちょうど一週間後に生まれ、 その半生は戦後史と軌を一にしているからである。(本書「は…

5/27・28「秩父フライフィールド in キャンプデー」に参加してきたよ!

最近、渓流釣りといえばもっぱら「秩父フライフィールド」ばかりの私。だって近くて、大物含めて良く釣れるんだもん! この釣り場は日本有数の重力式コンクリートダム「浦山ダム」(上写真、橋の奥にちらりと見える)直下の浦山川(荒川支流)の一部区間を利…