プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (後編)

(中編からつづく) 

 

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楽しい宴会の途中でとんでもないことに気付いた。「寝袋持ってくるの忘れた」。バックパックに荷物詰める際、「今回はどの寝袋にしようか?」と考えていいて、結論を出さないまま荷造り終了してしまったのだ。マヌケである。しかし、このピンチも秩父漁協が備品の寝袋を貸してくれて助かった。もう秩父方向に足を向けて寝られない。

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「どこにも寝袋が入っていない!?」


 

翌朝は早朝4時頃から釣り人たちはもぞもぞ動きだし、僕も5時半ごろには起きたら、外では我々の仲間のコーヒーマスターであるアンドーさんが、いい匂いのコーヒーを淹れていた。それをいただき、ダラダラおしゃべりをしていると、いつもやる気満々のシミズさんとヨシダくんはまだ陽があがる前なのに釣り支度して、さっさと川に向かっていった。若いナ。僕も30代ぐらいの時はああだったナ….などと思いながら美味しいコーヒーをすする。頭がしゃっきりしてくる。日の出。よし行こう。だって釣りをしに来たんだから。

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10〜15cmぐらいの水深の瀬とヘチでこれくらいのイワナが何匹か釣れた。


この日も釣り場はいいコンディションだった。1匹目はイワナ。昨日のような食いの浅さもなかった。それどころか沈むフライでは毛鉤を丸呑みされることが多かった。途中、イナガキさんに会ったら、このフライ使ってみて下さいよと奇妙な毛鉤を渡された。釣り鉤に靴ひものような柔軟な革紐を結びつけたその毛鉤に交換してみる。毛鉤の重さでまともにキャストできない。しかも使っているうちに革紐が水を含んでますます投げにくい。しかし、なんとかポイントにポチャンと落とすと、柔らかい革紐はミミズのような、ヒルのような、あるいは逃げ惑う小魚のような、面白い泳ぎ方をする。すると付近にいた魚がそわそわし始める。直後、一匹が辛抱溜まらん!という感じで毛鉤に飛びつき、ロッドで合わせるとずしりと魚の重みを感じる。こんな釣り方で40cm近いニジマスが2匹釣れた。魔性の毛鉤だが、通用するポイントと、あまり反応しないポイントがあった。釣り人に何回も叩かれているような、釣りやすいポイントでは反応が悪いように感じた。

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ニジマスはサイズの割に強いファイトをする魚が多かった印象。

何匹か釣っているとちょっと飽きたので今度は「クロスオーストリッチ」に毛鉤を交換した。日本のフライフィッシング界の鬼才である島崎憲司郎さん考案のこのフライパターンは『フライの雑誌』誌上で発表後、材料のオーストリッチ・ハールが品薄になるなど一世を風靡した(狭い一世だけど)。つくるのが超簡単でとにかくどこでもこの毛鉤を沈めれば釣れる。そうやっているウチにあっという間に昼飯時間が迫ってきた。そこで最後にまたスタンダード・ドライフライ「クイルゴードン」に替え、ライズを拾っていく。チビだけどヤマメちゃんも釣れた。これでニジマスイワナ・ヤマメの3種達成。

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ヤマメ18cmぐらい。かわいいのう。


気がつくとみんな昼飯のために川から上がって、川にいるのはイナガキさんと僕だけになっていた。と、対岸ギリギリで「ボスっ!」と言うライズ。クイル・ゴードンを投げると、「ぱっくり」とスローモーションを見ているような理想的なタイミングで魚が食い付き、ロッドに重みが伝わった。40cmは切るがいい体格のニジマス。「よしっ!満足。これで一区切り。昼食にしよう」
イナガキさんは、まだ釣っている。ホリウチさんもそうだが、このしつこさ、ねちっこさこそがほんとうに釣りが上手い人の特徴であろう。見習いたいものだ。

昼飯はウチダさんがつくる秩父名物みそポテトと、この日の朝にやってきたタナカさんが持ってきたカマスやメアジ、キンアジの干物を焼いた。ことごとく旨い。お腹が満足したら、なんか釣欲も満足してしまったみたいで、ここで解散と相成った。まあ、おっさんたちの体力の限界でもある。

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秩父の山奥で香ばしく焼かれる海の魚たち。


こうして秩父フライフィールド「キャンプデー」の2日間が終わった。次回は来年の5月だが、その前に正月2日の厳冬強化合宿というのもあるらしい。今回のように寝袋を忘れたら凍死しそうだが、可能であれば参加してみたいものだ。

(完)