プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

呟き

今年最後の読書:『JAMJAM日記』(殿山泰司)

JAMJAM日記 (ちくま文庫) 「ほとんどの日本国民同様、おれも気が付いた時には、殿山さんの顔を知っていた」と本書の巻末解説で山下洋輔が書いている。山下よりずっと年下の私も同じである。物心ついた時には殿山さんの顔を知っていた。子供の心に深く…

西荻でル・クレジオの短編集と約40年ぶりに再会する。

〝金曜日に仕事で出かけた西荻で、駅近くの古本屋を覗いたらル・クレジオの短編集『ロンド その他の三面記事』の単行本を見つけて、懐かしさのあまり思わず買ってしまった。〟

詩人のなりそこね

子どもの頃からなりたいものはたくさんあった。しかし、どれも非現実的な職業ばかりだったし、移り気だったので何かを目指して頑張るという経験には乏しかった。 幼稚園年長組だった頃、お絵かき用のスケッチブックを買ってもらった。表紙にはヨーロッパの古…

僕らの街に(またも)モスバーガーがやってきた。

西武池袋線「清瀬駅」北口にある西友清瀬店1階にモスバーガーが6月10日オープン! 僕はこのように看板が掲げられる前、外装工事が始まってすぐに気付いていたので、FBの地域コミュニティページに投稿したら「これでモスを食べるために秋津や東所沢まで足を伸…

春来たりなば…

フライの雑誌 124(2022春号): 特集◉3、4、5月は春祭り 北海道から沖縄まで、毎年楽しみな春の釣りとそのとき使うフライ|『イワナをもっと増やしたい!』から15年 中村智幸さんインタビュー|島崎憲司郎さんのスタジオから 3、4、5月に欠かせない釣りと、その時…

「モンテ・クリスト伯」から「成城だより」。そして「大岡さん」と「大谷さん」

成城だより 上 (講談社文芸文庫) 昨夏に義弟が新型コロナウイルス感染症で亡くなって、諸行無常な気分に陥りながら手に取ったのは、学生時代に読んだ「モンテ・クリスト伯」だった。かつてと異なる訳者だったが、良い訳文だと感じた。そしてこの小説はほんと…

妹の誕生日

youtu.be そうだ! 今日は妹の誕生日であった。生まれたのは東京五輪があった1964年。出産を控えて僕は兵庫県西宮市の母の実家に預けられた。その往路はまだ新幹線がなかったので東海道本線特急「こだま」であった。まだ2歳半だったけど、当時のことは断片的…

『歩くひと 完全版 』(谷口ジロー)を読んだよ。

r 最近、NHKでTVドラマ化された亡くなった谷口ジロー氏の名作が、全エピソード収録&カラーページ再現の完全版として出版されたので、さっそく購入して読んでみた。いや読むと言うより、観た、といった方がふさわしい読書体験だった。 マンガとしては大判のB…

『豊饒の海』Revisited

新型コロナ感染拡大が深刻化しつつあった3月上旬から再読を始めた『豊饒の海』。学生時代は1〜2巻を文庫で買って、残りを図書館で借りて読んだらしく、3〜4巻は手元にないので買うことにした。電子本でもいいのだが、どうせならと思って紙の本にした。かつて…

Stay Home Sesssion Vol.1

家に居る時間が長くなったのでこれまでなかなかいじれないでいた楽器に触れる機会が増えた。 ■ステッペンウルフ「ワイルドで行こう!」 こういう若い頃に覚えた曲は楽器を手にするとだいたい思い出せる。でも、最近覚えた曲はすぐ忘れてしまう。つらい。 www…

コロナ禍の蟄居生活の中で積んでおいた神吉拓郎『私生活』を読む。

私生活 (P+D BOOKS) 2月下旬に有楽町・交通会館の三省堂で見つけて買っておいた神吉拓郎『私生活』。1983年第90回直木賞受賞を受賞した短編集で、以前は文春文庫で出ていたが、今年2月に小学館P+D BOOKSとしてペーパーバックでも刊行された。文庫より字も大…

志村けんの死が意外となんだかボディーブロー

志村けん(敬称略)の死はある程度予期していたので、特に意外ではなかった。 新型コロナウイルスによる肺炎で入院し、人工呼吸器を付けられている…と聞いた時点で死ぬ確立は高いなと思った。ヘビースモーカーだったし(四年前に肺炎をきっかけにやめたらし…

アマチュアとして生きる。

体験という言葉の空しさ。体験とは実験ではない。それは人為的にひき起こすこともできぬ。ひとはただ、それに服するのみだ。それは体験というより、むしろ忍耐だ。ぼくらは我慢する──というよりむしろ耐え忍ぶのだ。あらゆる実践、ひとたび経験を積むと、ひ…

ウイークエンド銭湯

2019年11月末で廃業した清瀬市最後の銭湯「峰の湯」 昨年は清瀬市内の銭湯3店が廃業し、とうとう市内で営業する銭湯がゼロになってしまった。もともと市内の銭湯の多くは5カ所あった大規模な都営アパートの近くにあった。昭和30年代後半、前回の東京オリンピ…

語られる思いと語られぬ思い

風の歌を聴け (講談社文庫) 『風の歌を聴け』は、ヴォネガットや太宰治やカミュや初期の大江健三郎、倉橋由美子等の作品とともに、私の進路に影響を与えた文学作品であった。この小説のイメージは「夏の終わり」だ。なので今頃の季節になると、この小説をこ…

先週土曜日の日経新聞に「片頭痛」の健康コラムを書きました。

先週土曜日の日経新聞に自分自身も悩まされている「片頭痛」に関する健康コラムを書きました。夏から秋の温度変化、気圧変化が激しい時期は片頭痛持ちにとってつらい季節なのです。でも、敵の正体さえキチンと知れば決して恐れることはありません。そういう…

『風林火山』のページをめくりながら、亡くなった橋本治のことを思った

掃除をしていたら本棚から井上靖「風林火山」が落ちてきた。掃除の手を止め、ぱらぱらとめくってみる。大好きな小説である。しかし、特に時代小説、という感じを受けずに読んでいる。武田信玄と山本勘助、そして由布姫の、共犯関係のような、三角関係のよう…

『はじまりのゼルダ 最初期音源集 1980-1982』雑感

はじまりのゼルダ 最初期音源集1980-1982 なぜか突然発売されたゼルダ草創期の貴重な音源集。 僕がもっとも好きなゼルダは、ギターのフキエさんとドラムのアコさん加入後の3枚『カルナヴァル』『空色帽子の日』そして個人的には最高傑作の『C‐ROCK WORK』。 …

NETFLIXのオリジナルドキュメンタリー『リマスター:ロバート・ジョンソン』雑感。あるいは私の「27クラブ」

www.youtube.com NETFLIXのオリジナルドキュメンタリー『リマスター:ロバート・ジョンソン』を見た。 ジョンソンに関してはかなり研究も進み、私も伝記やドキュメンタリーに接しているのでこの番組にはそれほど目新しい情報はなかったが、最新の研究成果を…

『The White Album』 Morgan Jamesが素晴らしいぞ!

youtu.be 今日は短めの文章を数こなす仕事だったので、なにかいいBGMはないだろうかと探して見つけたのがこれ。ミュージカル女優でR&B系ヴォーカリストでもあるモーガン・ジェームスによるビートルズ「ホワイト・アルバム」の全曲カバーである。モーガン…

今は亡き釣り人のために。

AMAZING GRACE for Mr.T サクラマス釣りの男性流され死亡 福井市の九頭竜川、1人は救助 | 事件・事故 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE 昨夏、友だちのIさんに紹介された大阪のTさんと言う知り合いの釣り人が、先月、サクラマス解禁で訪れていた九頭竜川…

アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会3』を読んだよ。

黒後家蜘蛛の会3【新版】 (創元推理文庫) SF作家であるアイザック・アシモフによる本格ミステリ連作短編の3巻目。特許弁護士、画家、数学者、暗号専門家など多士済々の秘密クラブ「黒後家蜘蛛の会」で繰り広げられる推理ゲームという設定で書かれた連作短編…

ワールドカップと喪失感

われわれサッカーファンは、4年に一度、ワールドカップ大会の歓喜を味わうわけだが、同時に大会の終幕とともに大きな喪失感を味わう羽目になる。2002年日韓大会の時は日本代表が初のベスト16となり、共催国の韓国が3位。そのほか番狂わせがいろいろあって…

フィリップ・ロスが亡くなった。

フィリップ・ロスが亡くなったそうだ。大学でフランス文学を専攻した私だが、2年生ぐらいから同時代の作家ではアメリカ文学のほうが面白いかもと思い始めてアップダイクやピンチョンやヴォネガットやロスなどを読み漁った。『さようならコロンバス』『ポー…

アガサ・クリスティ『パディントン発4時50分』再々再読

パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 先週、僕が好きな『パディントン発4時50分』のテレビドラマが放映されていたので、それほど期待しないで見てみた。放映されたドラマは予想以上に酷いものだった。 この小説の名探偵はミス・マープル…

Love in Vain

お前は岩場の山羊が子を産む時を知っているか。 雌鹿の産みの苦しみを見守ることができるか。 月が満ちるのを数え 産むべき時を知ることができるか。 雌鹿はうずくまって産み子を送り出す。 その子らは強くなり、野で育ち 出て行くと、もう帰ってこない。 (…

ビゼーと悪妻

芸術家に悪妻は付きものだ。 ビゼーも悪妻の持ち主だったらしい。 私は17歳の時より思う所あって古典音楽を聴くのをやめたのだが、「アルルの女」は時折聞いていた。 小学生の時、放送委員をやっていたことがあるのだが、「アルルの女」ばかりかけていたら…

「A Hard Day's Night」関西弁訳

The Beatles - A Hard Day's Night - Official Video しんどかった日の夜、犬ころみたいに働いたわい。 しんどかった日の夜、丸太みたいに眠りたいわい。 そやけど、お前のウチ行って、 お前の仕草をみていたら、 なんかごっつ気分ようなってきた。 おう、一…

あれから23年。

ヒースクリフ! 私よ、キャシーが帰ってきたわ。ああ、とても寒い。この窓から中にいれてちょうだい。 (ケイト・ブッシュ『嵐が丘』拙訳) 私は久しぶり(10年とか15年のスパン)にあった人から「ぜんぜん変わってないねえ」と言われるタイプの人間なの…

忙しいと釣りについて考えたくなる。

忙しいと釣りについて考えたくなる。なぜだろうと思う。夢の中にも釣りが出てくる。釣れなくて苦しい。うんうん唸っていると目が覚めるのだ。 フライフィッシングを始めた頃、何気に洋書(アメリカ)の入門書を買ってみた。ちょうど今みたいな繁忙期に仕事…