opinion
昨年のノーベル文学賞を受賞した作者の代表作。各所で紹介されている通り、この作品は1980年の民主化を求める市民と軍事政権の衝突「光州事件」に材を取っている。 この10日間の騒乱中に15歳で軍に射殺された少年を中心に、彼と同様に命を失った人々、またか…
突如として、福永武彦マイブームがやってきた。 きっかけは、仕事で知り合った女性から自作の句集が送られてきたことである。その本の「序」を読んでみると、彼女の父親は石田波郷の信奉者で、彼女自身も波郷の句を愛好し、彼が入院した清瀬の東京療養所跡を…
安部公房の“遺作”である『カンガルー・ノート』を読了。 読めばわかるが、本作は作者が自らの寿命を意識しつつ「性=生」と「死」の問題をモチーフとする中編である。大きな特色としては安部作品のなかでも特筆すべき「軽妙」さだろう。脛から生えてくるかい…
フライの雑誌 124(2022春号): 特集◉3、4、5月は春祭り 北海道から沖縄まで、毎年楽しみな春の釣りとそのとき使うフライ|『イワナをもっと増やしたい!』から15年 中村智幸さんインタビュー|島崎憲司郎さんのスタジオから 3、4、5月に欠かせない釣りと、その時…
生き物の死にざま 作者:稲垣 栄洋 草思社 Amazon 30種類の動物の「死にざま」を、雑草生態学の専門家である著者がそこはかとないペーソスを秘めた文章で淡々と叙述していくサイエンス・ノンフィクション。単行本発行時から気になっていた本だが、早々に文庫…
明治開化安吾捕物帖 | 坂口 安吾 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon NHK総合土曜日夕方の今となっては貴重な時代劇枠で「明治開化 新十郎探偵帖」というドラマをやっていて、わりと楽しみに見ている。すぐにこのドラマが坂口安吾「明治開化 安吾捕…
本日の日経夕刊にこんなコラム記事を書きました。掲載は夕刊。web版では登録すれば無料で全文読めます。記事で取り上げた土屋鞄では大人用ランドセルも作っており、いま自転車通勤者に人気だそうです。ちょっと欲しい。 www.nikkei.com
決定版 大東亜戦争(上下)合本版(新潮新書) 今月に入ってから読んでいる新刊「決定版 大東亜戦争」。敗戦後、じつに76年を経て日本人がイデオロギーを排して自らの戦争を検証した1冊(上下だから2冊か)で、書名通りの力もこもった叙述に圧倒される。日本…
アーバン・アウトドア・ライフ (中公文庫) 日本に「アウトドア」という概念を持ち込んだ人物の一人といわれている芦沢一洋。僕がフライフィッシングを始めた当時、専門誌の「フライフィッシャー」や「アングリング」といった雑誌に連載を持ち、雑誌の中でも…
忘れられた巨人 まもなくカズオ・イシグロの新作、ノーベル文学賞受賞第一作『クララとお日さま』が世界同時発売される。今回は子どもの遊び相手となるAIロボットが主人公だという。いやまったく、またもや読者の期待をはぐらかし、意表を突くスタンスは創作…
www.news-postseven.com PL教団の3代目教祖御木貴日止さんの訃報が流れ、個人的には深い感慨におそわれた。「PL教団」といえば、傘下の高等学校がかつて高校野球の強豪校だったことで一般的に知られている。私も小学生の頃から大阪府代表のPL高校の活躍に目…
保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで (中公新書) ぼくは自分のことをリベラリスト的性向が強い人間だと自任している。個人の生活への国家の介入は最小限に留めたいし、「伝統」や「道徳」あるいは「社会福祉」などの美名のもとに国家の価値観を…
先週の日本経済新聞土曜日夕刊に、自分の夏休みをネタにしてこんな記事を書きました。おやじセンス丸出しのヘッドラインは新聞社の人がつけました。まあ、良しとします。登録すれば無料で全文読めます。 www.nikkei.com 【追記 2020.9.25】同じコラムが、NIK…
「光文社古典新訳文庫』がスタートした時、「光文社が古典? どうせ続かないだろうな....」なんて舐めていました。その後続々と刊行される素晴らしい新訳の数々に圧倒され、いまはとても申し訳なく思います。 この新訳シリーズを立ち上げた編集者である駒井…
一人称単数 (文春e-book) 村上春樹6年ぶりの短編集が出たので短編小説家としての村上ファンの私は当然発売日に買って読んだ。今回は自己言及的、自己批評的、自己パロディ的な要素が散りばめられている。端的に言えば、自分を素材に遊んでいる。短編集として…
終わりなき日常を生きろ ──オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫) オウム事件直後に出版された『終わりなき日常を生きろ』は、1990年代に生きる「若者」の一つの断面を描いた社会学者・宮台真司の出世作だ。 輝ける未来もハルマゲドンも来ることはない、た…
筒井康隆『老人の美学』とブレイディみかこ『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。年明け早々にこれら話題のベストセラー本2冊を読んでみた。 それぞれ同じ本を読んだ人とじっくり語り合いたくなる良書だが、老人と子供という人生の両端について書…
2019年11月末で廃業した清瀬市最後の銭湯「峰の湯」 昨年は清瀬市内の銭湯3店が廃業し、とうとう市内で営業する銭湯がゼロになってしまった。もともと市内の銭湯の多くは5カ所あった大規模な都営アパートの近くにあった。昭和30年代後半、前回の東京オリンピ…
ヒカシュー 天然のクリスマス 今年結成40周年を迎えたヒカシューのクリスマスイベントに二年ぶりの参戦。オリジナルメンバーの井上、山下両氏のイノヤマランドをオープニングアクトに、大槻ケンヂと小川美潮がゲストという豪華ラインナップ。ちなみにイノヤ…
花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION (ちくま文庫) 昨夜〜今日のお昼までは風邪?で寝たきりに近かったので長らく積ん読しておいた本書を読んでいた。たまには風邪をひくのもいいものだ。 英国ブライトンの貧民街に住む鬼才コラムニストの著者のデビ…
"Photo by CEphoto, Uwe Aranas" 首里城は10年ほど前の沖縄出張の際に訪れた。再建とはいえ、往事の趣を伝える見事な建築と収蔵品でとても楽しめた。ただいちばん思い出に残っているのは、鎖之間で琉球の伝統菓子をいただいたこと。あの場所も燃えてしまった…
www.sankei.com 与党の責任者の一人である二階さんが「まずまず」とか人に聞こえるところで言ってはダメなんで、それはあやまったほうがいい。一方で伊勢湾台風(死者約4700)や狩野川台風(死者・行方不明1200以上)に比せられ、「100年に一度」の大雨を降…
風の歌を聴け (講談社文庫) 『風の歌を聴け』は、ヴォネガットや太宰治やカミュや初期の大江健三郎、倉橋由美子等の作品とともに、私の進路に影響を与えた文学作品であった。この小説のイメージは「夏の終わり」だ。なので今頃の季節になると、この小説をこ…
とうに涅槃をすぎて (徳間文庫) 世界は相変わらず19世紀である。だからいまだにダサイ小説が売れる。日本映画は相変わらずダサイ。マンガだってダサイ。インテリの悩みはここに尽きる──「どうして自分以外の人間はみんな類型的なんだろう?」 インテリが一…
8月の個人的ハイライトといえば、やはりNetflix「全裸監督」の公開だろう。これは実に良くできたドラマで、十分な資金と時間をかけて、そして何よりスポンサーや世間への過度な忖度さえなければ、日本でもこれだけのレベルのドラマを製作できるのだと、あら…
先週土曜日の日経新聞に自分自身も悩まされている「片頭痛」に関する健康コラムを書きました。夏から秋の温度変化、気圧変化が激しい時期は片頭痛持ちにとってつらい季節なのです。でも、敵の正体さえキチンと知れば決して恐れることはありません。そういう…
ヒトラーの時代-ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか (中公新書) 本書の著者である池内紀はフランツ・カフカやギュンター・グラスの翻訳で知られる独文学者で歴史の専門家ではない。これら20世紀文学を扱った文学者の宿題として「ヒトラーの時代」を書かね…
www.huffingtonpost.jp あいちトリエンナーレ「表現の不自由展 その後」をめぐる騒動に対する私の印象は「ダサい奴ら同士のコップの中の最高にダサい戦争」ということである。 日本における「表現の自由」について考える時、私が立ち返るのは、2015年、パリ…
ファーブル昆虫記 10冊セット (岩波文庫) ※やっぱり「虫」ではなく、「蟲」をタイトルに使って欲しい!(本文参照) ファーブルは高齢になると年金による収入がなく生活は極貧であったと言われている。昆虫記ほか科学啓蒙書の売れ行きもさっぱりであった。85…
3月23日(土)、東京都品川区の区立天王洲公園で開催された国際大会「ブラインドサッカーワールドグランプリ(WGP)2019」を観戦した。 www.wgp-blindfootball.com この大会には日本やアルゼンチン、イングランド、スペインなど世界ランク20位以上の8カ…