プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

2017-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『日本神話の源流』 吉田敦彦〜「吹き溜まりの文化」としての日本文化。神話からたどるその特異性と〝グローバル〟性。

渓流釣りをしていると、川の流れは一様ではないことがよくわかる。エサや毛鉤を魚の目の前に送り届けるためには、なにより流れを読む目が必要だからだ。岩やカーブで押し曲げられ、ねじ曲げられた流れはいくつにも分かれ、渦を巻いたり、時には逆流すること…

Trouble is my business.

きみが僕のことなんかお構いなしで 僕もきみなんか気にもしてなかったとしたら 僕らはきっと 退屈と苦痛のなかを 千鳥足で歩いて行ったことだろう 時折 雨の降るなか 空を見あげ 僕らのうちで悪いのはどちらだろう などと考えながら・・・・・ 翼のある空飛…

奇妙な味のタイトル3題〜『夫のちんぽが入らない』『聲の形』『葛西善蔵と釣りがしたい』

レコードやCDのジャケ買いがあるように、小説本にはタイトル買いがあると思う。 たとえば、高校時代に読んだ『芽むしり仔撃ち』や『性的人間』『万延元年のフットボール』『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』といった大江健三郎作品はタイトル買いだった…

April Come She Will 〜今月の読書録〜

なんだかんだ言って本読んでるな。でも、積ん読も多いんですよ。仕事で読んだ本を除いて、今月読み終わった本をざっと紹介してみる。 聲の形(講談社/全7巻) 大今良時 アニメ映画化もされた話題作。設定からは「障害者差別」「いじめ」というタームが思い…

『海街diary 8 恋と巡礼』読了

1年以上ぶりの第8巻が発売されたので、早速購入して読了。『恋と巡礼』....実際に巡礼する場面が出てくるのだが、さまざまな想像を掻き立てる魅惑的なサブタイトルである。 本巻ではこれまでもっぱらお笑い担当で脇に徹していた三女のチカが新しいヘアスタイ…

どうでもいいこと。

すべてはどうでもよいことだったゆえに、父はどこへ行っても好き勝手にふるまう(テニスクラブにもぐり込む、レストラン評論家のふりをして無料で食事にありつく)ことができた。それを可能にするために、父は自分の持つ魅力を精いっぱい活用した。だからこ…

Der Steppenwolf(荒野のおおかみ)

荒野のおおかみ (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1971/03/02 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 13回 この商品を含むブログ (36件) を見る 街がフレッシャーズであふれるこの季節に、若干の屈託とともに思い出す文学作…

『騎士団長殺し』をめぐる冒険

「歴史の中には、そのまま暗闇の中に置いておった方がよろしいこともうんとある。正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」 (村上春樹『騎士団長殺し』〜 騎士団長の台詞より) 先…

3・20の思い出

www.jiji.com 22年前の本日、僕は有給休暇をとって早朝から妻と河口湖にボートを浮かべて、ルアーでニジマスを釣っていた。午後、すっかり冷えた体をほうとうと温泉で暖めて、帰りのクルマで聴いていたラジオで地下鉄サリン事件を知った。 帰宅して当時の職…

卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう。

熱い心をしばられて 夢は机で削られて 卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう あーわかってくれとは言わないが そんなに俺が悪いのか ララバイ ララバイ おやすみよ ギザギザハートの子守唄 (チェッカーズ『ギザギザハートの子守唄』作詞:康珍化) 卒…

年度末の差し迫ったこの時期に音楽ファンとしての自分を点検する。

そこにあるものではなく、ないものをプレイするんだ。知っていることではなく、知らないことをやる。変化しなければいけない。それは呪いのようなものだ。 Don’t play what’s there, play what’s not there. Don’t play what you know, play what you don’t…

Memento Mori.

今月が終わる前にどうしてもこの一文を記しておきたかった。 自分の人生のどんなに短い一場面でも、確かに同じ時間を並走していたと思える「人」を失うのは言うまでもないが非常につらい経験だ。好きなミュージシャンや作家、スポーツ選手、俳優などもそこに…

戦争と貧困 〜山田参助『あれよ星屑』へのオマージュ

「貧困」が大きな社会問題となり、実際、奨学金や年金、生活保護などにおいてさまざまな制度的矛盾が露呈してしまっている。 現在55歳の僕が物心ついた頃は、まだ日本は貧しかった。目に見えて貧しかった。わが家はそれほど貧しくはなかったが、身近に貧困家…

震災と電話について

(Jun Teramoto - Flickr: after Tsunami --- Devastation in Haramachi-ku, Minamisōma, Fukushima after the tsunami) こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生…

『沈黙 ─サイレンス─ 』を見たよ。

……デウスと大日と混合した日本人はその時から我々の神を彼等流に屈折させ変化させ、そして別のものをつくりあげはじめたのだ。 言葉の混乱がなくなったあとも、この屈折と変化とはひそかに続けられ、お前がさっき口に出した布教がもっとも華やかな時でさえも…

鎮静剤としてのジョージ・ハリスン

朝っぱらから言いたかないけど、オレのブルー・スウェード・シューズを踏むなよな。 おい、オマエ! 照れるなよ。俺のフィドルを弾いてみせろよ。 ベートベンをぶっとばせ! チャイコフスキーもたまげるぜ。 (チャック・ベリー「ロールオーバー・ベートベン…

アマチュアについて。

テレビ芸人で絵本作家もやっているという人が、ベストセラーになった自分の作品を電子版で無料にしたということで話題になっていた。 キングコング 西野 公式ブログ - お金の奴隷解放宣言。 - Powered by LINE 要は2000円もする自分の絵本を子どもが気軽に買…

読書について

夥しい書籍が──数百枚の重い粘土板が、文字どもの凄まじい呪の声と共にこの讒謗者の上に落ちかかり、彼は無慙にも圧死した。(中島敦『文字禍』) 何度、本なんかもう読むまいと思ったことか。 他人の思考経路に付き合ったり、法螺話に相づち打ったり、 読書…

「愛しのフリーダ(字幕版) 」を見たよ。

愛しのフリーダ(字幕版) 発売日: 2014/05/30 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る 1961年、リヴァプール。17歳のフリーダは同僚に連れられてキャヴァーン・クラブへ出かけ、ステージで演奏する革ジャンの4人組、ザ・ビートルズの音楽に衝撃を…