脳内遊戯
おれたち一緒に、こんな脳内遊戯にふけっている。
バリアを押しやり、種を蒔いてる。
やっているのは脳内ゲリラ。
マントラとなえりゃ、この世は平和さ。
ジョン・レノンの凄さは、たとえ心の遊戯=妄想さえも、聞き手の脳内にリアリティーを持って現出させてしまう歌の上手さにある。たとえ自作の未完成品の曲(たとえばビートルズ『ホワイトアルバム』やソロの『ミルク&ハニー』収録の諸作)でさえ、そうとは聞こえない。完成度の高い他人の曲(「ツイスト&シャウト」「プリーズ・ミスター・ポストマン」「スタンド・バイ・ミー」など)をレノンが歌うと、気の毒なほど元歌を凌駕してしまう。
こういう圧倒的な才能を持っている気分というのは、どうなのだろうか? レノンは自分の才能に自覚的だったはず。そしてその圧倒的さゆえに、それに寄りかかるとともに、反発もしていたと思われる。ビートルズ時代に声をエフェクトで変えたりしたこと、ヨーコの口車に乗って、愛と平和思想の人のフリをしたことなどが、その反発の現れと言える。
才能とは親のようなものなのかもしれない。どちらも、利用しつくすために存在する。そして、捨て去るためには、かなりの精神的努力が必要。