プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

回想

ほんとうに「クイーンは日本の少女たちが発見した」のか? 

大島弓子『ほうせんか・ぱん』(1974年)より 世間ではクイーンの伝記映画が盛り上がっていて、その語られる文脈の中で「クイーンは日本の少女たちが発見した」というものがある。ほんとうだろうか? 確かにデビューアルバムは本国で不評だったようだが、セカ…

「原子力の日」あるいは「反原子力デー」に思い出すLPレコード。

No Nukes by Various Artists (1997-05-03) 10月26日は「反原発デー」だそうです。いや、もともとは「原子力の日」だったのですが、その日にぶつけた反原発デモなどが開催されるためにそういうことになったらしい。 1979年、米国でスリーマイル島原発事故が…

銅像になってしまった園長先生

私の出身幼稚園の門の所に創立者夫妻の銅像が建っている。 園長夫妻の銅像。妻が園長。夫はおそらく理事長だったんだと思うが、園児の前にはほとんど登場することはなかったので顔はまったく覚えていない。 わが家から1kmもない所で隣にマルエツがあるため、…

失われた名盤④『C-ROCK WORK』 ZELDA

C-ROCK WORK 1987年発表の第4作。ムーンライダースの白井良明がプロデュースした前作「空色帽子の日」(1985年)は、統一感溢れるサウンド構成によるコンセプチュアル・アートとも言える傑作で本作と甲乙つけがたいわけですが、本作も元四人囃子の佐久間正…

ワールドカップと喪失感

われわれサッカーファンは、4年に一度、ワールドカップ大会の歓喜を味わうわけだが、同時に大会の終幕とともに大きな喪失感を味わう羽目になる。2002年日韓大会の時は日本代表が初のベスト16となり、共催国の韓国が3位。そのほか番狂わせがいろいろあって…

釣り開始30分前まで、僕は「プログレ」を聴いている。(『フライの雑誌』 第64号〈2004年2月〉掲載)

先日、机の引き出しを整理していたら古いUSBメモリが出てきたので、中を見てみるといろいろ釣り絡みのデータが入っている。その中にその昔『フライの雑誌』に寄稿した元原稿も入っていた。確か「釣りをしない時間」というテーマでエッセイを募集していたのに…

フィリップ・ロスが亡くなった。

フィリップ・ロスが亡くなったそうだ。大学でフランス文学を専攻した私だが、2年生ぐらいから同時代の作家ではアメリカ文学のほうが面白いかもと思い始めてアップダイクやピンチョンやヴォネガットやロスなどを読み漁った。『さようならコロンバス』『ポー…

The Feelies『Crazy Rhythms』は素晴らしい!

Crazy Rhythms このところSpotifyでThe Feelies(スペルをみるとフィーリーズなような気がするが、わが国では一般的にフィリーズと呼び習わしているっぽい)のファーストアルバム『Crazy Rhythms』(1980)がヘビロテである。 70年代後半商業主義化したニュー…

森岡先生が教えてくれたサッカーの楽しみ

www.soccer-king.jp サッカー日本代表ハリルホジッチ監督の解任は今もって解せない。この決定をした責任者である日本サッカー協会会長の田嶋幸三という人は、いったいどういう人なのかをネットで調べてみると、むしろ世界のサッカーをよく知る国際派といっ…

ビゼーと悪妻

芸術家に悪妻は付きものだ。 ビゼーも悪妻の持ち主だったらしい。 私は17歳の時より思う所あって古典音楽を聴くのをやめたのだが、「アルルの女」は時折聞いていた。 小学生の時、放送委員をやっていたことがあるのだが、「アルルの女」ばかりかけていたら…

『サイバネティックスはいかにして生まれたか』N・ウィーナーの思い出〜流れを読む人。

SF小説の〝サイボーグ〟や近年至る所で接頭辞的に使われる〝サイバー〟という言葉の発祥となったサイバネティクス。この本はサイバネティクスについての解説書ではなく、サイバネティクスを創始した数学者の自伝。天才がどのように生まれるかの貴重な記録で…

失われた名盤③ 『Real Moral Fibre』VENUS IN FURS

Real Moral Fibre VENUS IN FURSは英国・サセックス出身のポストパンク世代のグループで、4ピースバンドを経て1985年にデュオ編成でレコードデビュー。実質的にはコンポーザーでマルチインストゥルメンタリストのTimesと名乗る人物のソロプロジェクトと考え…

あれから23年。

ヒースクリフ! 私よ、キャシーが帰ってきたわ。ああ、とても寒い。この窓から中にいれてちょうだい。 (ケイト・ブッシュ『嵐が丘』拙訳) 私は久しぶり(10年とか15年のスパン)にあった人から「ぜんぜん変わってないねえ」と言われるタイプの人間なの…

忙しいと釣りについて考えたくなる。

忙しいと釣りについて考えたくなる。なぜだろうと思う。夢の中にも釣りが出てくる。釣れなくて苦しい。うんうん唸っていると目が覚めるのだ。 フライフィッシングを始めた頃、何気に洋書(アメリカ)の入門書を買ってみた。ちょうど今みたいな繁忙期に仕事…

葛西善蔵と酒が飲みたい。

先日、むかし部下だった男から電話があった。お互い前後して会社を辞めたので10年以上会っていない。要は、僕と飲みたい、昔迷惑かけたことをいろいろ反省してる…という趣旨なんだが、なぜ今電話してきたかよくわからない。おそらく本人にもわからないのだろ…

丘を越えて 〜『嵐が丘』と前世の記憶

嵐が丘 (新潮文庫) 「エレン、あとどれくらいしたら、わたし、あの丘のてっぺんまで行けるようになる? 丘の向こう側にはなにがあるのかなあ──海?」 「違いますよ、キャシー嬢ちゃん」あたしは答えたものです。「これとおなじような丘が連なっているんです…

シンプル・マン

まだガキだった頃、ママにこう言われたのさ。 「私の横におすわり。そしてよくお聞き、かわいい坊や。 これから私が言うことをしっかり聞いて、守りさえすれば きっと明るい明日がまっているはずよ。 自分の時間を大切にしなさい。焦ってはダメ。 トラブルは…

ポドルスキの活躍を見て2006年ドイツ・ワールドカップと中田英のことを考えていた

こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生死と何変わることはない。ただ、人の生死に意味や価値があるかのような言説が、人の世に行われてきただけだ。従ってこう…

現実の上空2mよりの落下。

モンドがどこから来たのか、誰にも言えなかったに違いない。ある日たまたま、誰も気がつかないうちにここ、私たちの町にやって来て、やがて人々は彼のいるのに慣れたのだった。 (J・M・G・ル・クレジオ『モンド』豊崎光一/佐藤領時訳 冒頭部) このように…

夏がくれば思い出す。死について断片的に。

幼い頃は人の手のことをいろいろ知っているものだ。手というものはいつも背の高さあたりにふらふら住んでいるからだ。マドモワゼルは気持ち悪い手をしていた。 (ウラジミール・ナボコフ『ナボコフの1ダース』より「マドモワゼルO」中西秀男訳) 前回の続き…

ビートルズ来日後、妹の死により家族は分解し、ポールの才能が爆発した。

道路でやっちまおうぜ。誰も見てないし。道路の上でやっちまおうよ。 Why Don't We Do It In The Road - Paul McCartney w/ Neil Young @ Desert Trip, Coachella, 10-15-16 昨年はビートルズ来日50周年だった。シェイスタジアムのライブ盤もCD化・映画化さ…

卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう。

熱い心をしばられて 夢は机で削られて 卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう あーわかってくれとは言わないが そんなに俺が悪いのか ララバイ ララバイ おやすみよ ギザギザハートの子守唄 (チェッカーズ『ギザギザハートの子守唄』作詞:康珍化) 卒…

Memento Mori.

今月が終わる前にどうしてもこの一文を記しておきたかった。 自分の人生のどんなに短い一場面でも、確かに同じ時間を並走していたと思える「人」を失うのは言うまでもないが非常につらい経験だ。好きなミュージシャンや作家、スポーツ選手、俳優などもそこに…

ジョン・レノンが死んだ日 〜Nobody Loves You (when you're down and out) 〜

www.youtube.com 36年前のことはつい昨日のように思い出せる。僕は大学のラウンジで紙コップのコーラを飲みながらフランス語の試験勉強をしていて、ラウンジに流れるFMラジオ放送の臨時ニュースでジョン・レノンが撃たれた事件を知った。女性ディスクジョッ…

男はつらいよ!

おかしな男 渥美清 (ちくま文庫) 1961年の夏、小さな雑誌の編集長をしながらテレビやラジオに出ていたぼくはNHKのドラマで全国区の人気者になりつつあった渥美清と初めて会った。芝居や映画をよく観る勉強家であり、見巧者の彼と喜劇マニアのぼくは親しく話…

10年前、父が墓を買った。

登山家引退 ちょうど10年前の2006年7月、父親が自分が入るための墓地を購入した。そこは自宅から徒歩で行ける浄土宗の寺院内にある。紀州にルーツを持つ関西人であり、ふるさと大阪を離れて半世紀以上経てなおも大阪弁を話した父だったが、特に大阪や関西に…

ビートルズ来日と妹の死

道路の上でやっちまおう。誰も見てないぜ。ほら、道路の上でやっちまおうよ。(THE BEATLES「Why Don't We Do it in the Road』拙訳) https://www.youtube.com/watch?v=5AdtR-d2HJQ また、「身近な死」の話である。 先週はビートルズ来日50周年ということも…

身近な死。

真空管アンプで聴く『レッド・ツェッペリン/天国への階段』 まもなく6月も終わり。今年も半分が過ぎ去った。実に早いものだ。そして年々、確実に早く感じるようになる。 毎年7月になると小学校4年生の時に出会った身近な死を思い出す。それは、サッカー部の…

フィリピンの子供たち。

神さまの祝福がいつもきみにあるといい きみのねがいごとがすべて実現するといい きみがすることがいつも誰かのためになればいい 星までとどく階段をつくればいい そして、一段一段のぼっていき きみがいつまでも若ければいいのに いつまでも、いつまでも若…

熊本のOさんと関サバ

熊本のOさんは年上の友人だ。 いや、もともとはお客さん(当時、広報室長)であって、しかも20近く年齢が離れているから、気安く友人なんていっては失礼だ。 それにもう10年近く連絡をとっていない。 しかし、ずっとOさんには友人と呼びたくなる親しみを感じ…