プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

The Feelies『Crazy Rhythms』は素晴らしい!

 

Crazy Rhythms

Crazy Rhythms

 

このところSpotifyでThe Feelies(スペルをみるとフィーリーズなような気がするが、わが国では一般的にフィリーズと呼び習わしているっぽい)のファーストアルバム『Crazy Rhythms』(1980)がヘビロテである。

70年代後半商業主義化したニューウェーブへのアンチとしてアートリンゼイのDNAやサムナー・クレーンのマーズなどの「ノーウェーブ」が生まれた。トーキングヘッズ、DEVO、B52’s、R.E.M.なんかもその流れで出現してきたように思う。知的な雰囲気に弱い耳年増なロックファンの高校生(わたくし)は、こうしたムーブメントを注視していた。

単調なようでいて中毒性のあるリズム。TELEVISIONから灰汁抜きをしたようなギターサウンド。パンクやテクノポップのムーブメント中でロック音楽の贅肉をそぎ落としていくの「シンプル」さの美学を再発見したような気になっていたのだが、このバンドはストライクゾーンど真ん中に近かった。

 

ところがその後、レッド・ツエッペリンは解散するは、ジョン・レノンは殺されるは、ボブ・マーリーはガン死するは、ついでにジョニー・ロットンが「ロックは死ぬ」宣言するはで、80年代になると退屈なゴテゴテ贅肉だらけないわゆる〝産業ロック〟の時代がやってきてしまった。おかげで僕はジャズに走って個人的な音楽リスナーとしての幅を広げることができたのだが。

 

The Feeliesのファーストアルバムのポップなデザインはインパクト絶大だった。「ロッキン・オン」の表2広告で初めて見たと思う。水色グラデーションのバックに色彩加工されたメンバー写真が写っているだけなんだけど、ロンドンパンクと対照的なIQ高めの何気ないセンスが秀逸なのですわ。ちなみにファーストアルバムのドラマーはアントン・フィア。ラウンジ・リザーズ、ゴールデン・パロミノス、ペル・ウブなどでも活動し、フレッド・フリスとの共演もある英国アバンギャルドの香りも濃厚に漂うセンス一発型ドラマーだ。

ファーストアルバムではビートルズの珍曲もカバーしている。作者ジョン・レノンも喜ぶ諧謔あふれるパンキッシュな仕上がりが素晴らしい。

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=k5o1-HxaRFM

 

The Feeliesは、同時期のカレッジバンドであるR.E.M.のようなケレン味もなく、コマーシャルな成功は得られなかったけど、リーダーのグレン・マーサーのもと細く長く活動を続け、昨年は新譜も出した。

ロック音楽はその時代のサウンドを鳴らさなければ、実際のところ存在価値はない。しかしビートルズやレッド・ツエッペリンがその代表であるように、無意識の普遍が時代を超越する場合がある。

このファーストアルバムも下手にシンセやエフェクターを使っていないぶん、現在でも通用、いやむしろこの単調の中に混沌を現出するフィーリーズ節は、今でも十分新しいといえるのではないだろうか? ....ていうかこういう志向のアマチュアバンド、今の日本にもいるよね。

www.youtube.com