プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

呟き

葛西善蔵と酒が飲みたい。

先日、むかし部下だった男から電話があった。お互い前後して会社を辞めたので10年以上会っていない。要は、僕と飲みたい、昔迷惑かけたことをいろいろ反省してる…という趣旨なんだが、なぜ今電話してきたかよくわからない。おそらく本人にもわからないのだろ…

丘を越えて 〜『嵐が丘』と前世の記憶

嵐が丘 (新潮文庫) 「エレン、あとどれくらいしたら、わたし、あの丘のてっぺんまで行けるようになる? 丘の向こう側にはなにがあるのかなあ──海?」 「違いますよ、キャシー嬢ちゃん」あたしは答えたものです。「これとおなじような丘が連なっているんです…

「日本も、けさから、違う日本になったのだ」

久しぶりに政治の話をする。 先の衆院選において、何人かの(リベラルな)純文学作家の方々が反アベ政権の立場から発言していて、ことごとく幼稚かつ的外れで呆れた。文学の言葉が現実への影響力を失って久しいが、その自覚がないままに現実を語る言葉の浅薄…

シンプル・マン

まだガキだった頃、ママにこう言われたのさ。 「私の横におすわり。そしてよくお聞き、かわいい坊や。 これから私が言うことをしっかり聞いて、守りさえすれば きっと明るい明日がまっているはずよ。 自分の時間を大切にしなさい。焦ってはダメ。 トラブルは…

Season of the Insects

ファーブルは高齢になると年金による収入がなく生活は極貧であったと言われている。昆虫記ほか科学啓蒙書の売れ行きもさっぱりであった。85歳を超えたファーブルは健康を損なう事や、横になる事が多くなる。そしてヨーロッパ全土にファーブルを救えという運…

ポドルスキの活躍を見て2006年ドイツ・ワールドカップと中田英のことを考えていた

こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生死と何変わることはない。ただ、人の生死に意味や価値があるかのような言説が、人の世に行われてきただけだ。従ってこう…

ウルトラセブンと玉川学園

先日仕事で玉川学園を訪れた。創立者自ら鍬を持って山と雑木林を切りひらいたというキャンパスは、最近では話題のテレビドラマ「やすらぎの郷」のロケ地にも使われており、多彩でユニークな造作の校舎と生い茂る雑木林の豊かな緑でちょっと散歩するのも楽し…

現実の上空2mよりの落下。

モンドがどこから来たのか、誰にも言えなかったに違いない。ある日たまたま、誰も気がつかないうちにここ、私たちの町にやって来て、やがて人々は彼のいるのに慣れたのだった。 (J・M・G・ル・クレジオ『モンド』豊崎光一/佐藤領時訳 冒頭部) このように…

夏がくれば思い出す。死について断片的に。

幼い頃は人の手のことをいろいろ知っているものだ。手というものはいつも背の高さあたりにふらふら住んでいるからだ。マドモワゼルは気持ち悪い手をしていた。 (ウラジミール・ナボコフ『ナボコフの1ダース』より「マドモワゼルO」中西秀男訳) 前回の続き…

ビートルズ来日後、妹の死により家族は分解し、ポールの才能が爆発した。

道路でやっちまおうぜ。誰も見てないし。道路の上でやっちまおうよ。 Why Don't We Do It In The Road - Paul McCartney w/ Neil Young @ Desert Trip, Coachella, 10-15-16 昨年はビートルズ来日50周年だった。シェイスタジアムのライブ盤もCD化・映画化さ…

Trouble is my business.

きみが僕のことなんかお構いなしで 僕もきみなんか気にもしてなかったとしたら 僕らはきっと 退屈と苦痛のなかを 千鳥足で歩いて行ったことだろう 時折 雨の降るなか 空を見あげ 僕らのうちで悪いのはどちらだろう などと考えながら・・・・・ 翼のある空飛…

Der Steppenwolf(荒野のおおかみ)

荒野のおおかみ (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1971/03/02 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 13回 この商品を含むブログ (36件) を見る 街がフレッシャーズであふれるこの季節に、若干の屈託とともに思い出す文学作…

卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう。

熱い心をしばられて 夢は机で削られて 卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう あーわかってくれとは言わないが そんなに俺が悪いのか ララバイ ララバイ おやすみよ ギザギザハートの子守唄 (チェッカーズ『ギザギザハートの子守唄』作詞:康珍化) 卒…

Memento Mori.

今月が終わる前にどうしてもこの一文を記しておきたかった。 自分の人生のどんなに短い一場面でも、確かに同じ時間を並走していたと思える「人」を失うのは言うまでもないが非常につらい経験だ。好きなミュージシャンや作家、スポーツ選手、俳優などもそこに…

女子にはわからぬヒゲの話。

今週はひたすら原稿を書き、企画をまとめる週ということで、もう3日もヒゲ剃っていない。明日からは外出・出張続きなのできれいさっぱりヒゲを剃り、連日のようにスーツを着ることになるだろう。先日亡くなったキューバのフィデル・カストロは戦闘服とヒゲ面…

「フライ」と「プログレ」

「フライ」と「プログレ」、そして「アラブの春」 僕の趣味は釣りと音楽鑑賞と読書である。 実に面白味のないラインナップだが、釣りでもっぱら楽しんでいるのはフライ・フィッシング(フライ)だし、音楽はロックを中心に幅広く聞くが、特に英国ロック、プ…

類型的な人間 〜11月の呟き

彼もまた、大抵の私たちと同様、罪──果して罪と言えるかどうか分からぬが──を犯すと、一旦は後悔しても、機会が与えられると、再び同じ罪を犯すのだった。気は短かったが、心はやさしく、寛大で、腐敗堕落した時代の人でありながら、人柄は誠実だった。夫と…

『魔太郎がくる!! 』の正義?

近頃、またしても「いじめ」問題で世間が喧しい。しかし、これはきわめて根深い、人類文明の古典的な問題であり、現代特有の問題としてクローズアップされている構図に少々違和感を覚える。 写真賞を受賞した作品に笑顔で写った数日後に自ら命を絶った青森の…

「シドと白昼夢」

www.youtube.com 昔 描いた夢で あたしは別の人間でジャニス・イアンを自らと思い込んでいた現実には本物が居ると理解っていた(椎名林檎「シドと白昼夢」) 加山雄三からマーク・ボラン、デビッド・ボウイ、ジョン・レノン、 さらに、芥川龍之介、太宰治、…

靖国と天皇の「うれひ」

忘れめや 戦の庭に たふれしは 暮らしささへし をのこなりしを (昭和37年 昭和天皇御製) 忘れることができようか 戦争で死んでいったのは、家庭を支えた男たちであったことを…と詠んだ昭和天皇。 今からちょうど10年前の夏、A級戦犯が靖国神社に合祀され…

Be My Wife

www.youtube.com 時々、きみはさびしくなる。時々、きみは途方に暮れる。おれは世界じゅういたる所に住んできた。そしてそのすべての場所から去った。おれのものになってほしい。人生を分かちあおう。おれと一緒にいてほしい。おれの奥さんになってくれ。 (…

6月の空。

Joy Division - Love Will Tear Us Apart (best audio) いつもの仕事がつらくなり やる気が減退しているとき 怒りがつのっても 感情が高ぶらないとき 僕たちは方法を変えて 違ったやりかたを試すようになる そんなとき愛はまたしても 僕たちを引き裂くんだ …

Day After Day

Badfinger - Day After Day (1971 - HQ - Restored) 今日はなんとこのブログの1周年記念日。この1年の間にのべ1万人を超える方々が見に来てくれた。ありがとう。一日だいたい30〜50アクセスといったところ。昔やっていたブログは1日で200〜700アクセスぐらい…

Indoor Games

「この永い年月のあいだ、どうして私以外の誰ひとり、中に入れてくれといって来なかったのです?」 いのちの火が消えかけていた。うすれていく意識を呼び戻すかのように門番がどなった。 「ほかの誰ひとり、ここには入れない。この門は、おまえひとりのため…

タイプについて。

個人というものを出発点に考えていくと、我々は知らず知らずのうちにひとつのタイプを創りあげてしまうことになる。一方タイプというところから考えていくと今度は何も創りだせない──まったく何ひとつ。 (スコット・フィッツジェラルド『リッチ・ボーイ(金…

「エライ人ぞな」。

今日の通りすがり。鶯谷のホテル街に囲まれ佇む「子規庵」。 人間は最も少ない報酬で最も多く働く人ほどエライ人ぞな。一の報酬で十の働きをする人は百の報酬で百の働きをする人よりエライのぞな。入の多寡は人の尊卑でない事くらゐ分つとろがな。人は友を撰…

朝のコント/春の呟き

彼女を追い越してから、彼は、単純にも、どこかの店先きに立ちどまっていさえすればいいのだと考えた。そうすれば、彼女はきっとそばへ来るはずだ。ところが、彼女はそんなことはしなかった。そのままどんどん歩いていった。 (フィリップ『朝のコント』よ…

さくら嫌い。

桜のしたに人あまたつどひ居ぬ なにをして遊ぶならむ。 われも桜の木の下に立ちてみたれども わが心はつめたくして 花びらの散りて落つるにも涙こぼるるのみ。 いとほしや いま春の日まひるどき あながちに悲しきものをみつめたる我にしもあらぬを。 (萩原…

秘密の川へ。

喜びに満ちた、自然のままの、どこまでもつづく川の広がり。他のなにものにもかえられない、マスたちが泳ぐ美しい川。きみやぼくの秘密の釣り場、カーティス・クリーク。きみやぼくの人生にそんな秘密の川、カーティス・クリークはどのくらいあるだろうか。 …

学問のすゝめ

昨年の今頃は自分の子どもたちがダブル受験でアタフタしていたが、今年は知り合いの子どもたちの受験の有り様を穏やかな気持ちで眺めている。それぞれの進路を模索する若い人たちの未来が、受験のみで決まるわけではないことは半世紀生きていればわかる。し…