NHK土曜時代劇『明治開化 新十郎探偵帖』雑感
明治開化安吾捕物帖 | 坂口 安吾 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
NHK総合土曜日夕方の今となっては貴重な時代劇枠で「明治開化 新十郎探偵帖」というドラマをやっていて、わりと楽しみに見ている。すぐにこのドラマが坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖」の翻案ドラマだと気づいて原作を読み返してみたが、やはり面白い。
名探偵結城新十郎とその取り巻き、勝海舟などの主要登場人物はドラマでも踏襲されているが、性格付けはかなり異なる。それに物語の時代設定が原作では憲法や議会成立直前あたりの明治中期(20年前後?)なのだが、テレビドラマでは維新後すぐ、時代の変わり目の政情不安の時期でまだ西郷隆盛も東京にいる(ドラマの終盤で大久保と袂を分かち帰郷)。
ストーリーも現代のテレビ視聴者を意識して、原作の大枠だけを借りてかなり変えており、ほとんど別の話になっている。でも若い俳優陣の好演もあって、なかなか雰囲気のあるドラマになっている。来週で最終回だが、どうやら西郷の挙兵(西南戦争勃発)がクライマックスになりそうだ。
原作の勝海舟は事件解決の正解になかなかたどり着けないヘボ探偵の役割を負わされているが、テレビドラマのほうでは時代の変転を見据える賢者=見者として物語の要の役割を負わされている。
できれば、オリジナルストーリーでもいいから続編を作ってほしい時代劇シリーズの一つである。