プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

「藤原仲麻呂」(中公新書)と「明治十四年の政変」(インターナショナル新書)を読んだ。

 
 

f:id:indoorffm:20210928202842j:plain

忙しい合間、時には仕事から逃避して古代史と近代史の新書を並行して読んだ。「明治十四年の政変」は仕事のため借用した本だが興味あるテーマだったので、別に自分で購入した。憲法制定や議会開設の考え方の違いから、伊藤博文らよって参議の大隈重信が明治政府から追放された事件だが、対立というよりはボタンの掛け違いの連続で、福沢諭吉五代友厚など民間の人々も絡んできてドラマとしても面白い。大河ドラマでもこのエピソードは取り上げられるかもしれない。
藤原仲麻呂」は新しい研究成果を盛り込んで、栄華の末に滅びたこの異能の政治家の真実に迫る。著者は「藤原仲麻呂の乱」というのは実のところ「孝謙上皇の乱」だったと喝破する。一族で権力を固める権謀術数の一方、中国皇帝の善政への憧れから官職名を唐風に改め、貧しい民のための改革政策を多く打ち出した。蘇我入鹿と共に逆臣の地位に置いたままだと、その真の姿が見えにくくなる人物を多角的に解剖した心踊る一冊であった。
ところでこの2冊が扱っている時代は1000年以上離れているのだが、太政大臣、右左大臣、参議といった官職名が同じであることが面白い。明治14年の政変後に太政官官制はようやく廃止される。朝廷というのはほんと時間が止まった世界だったのだ。