プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

高峰秀子著『いっぴきの虫』雑感 〜類い希なる人間観察眼と文才を有する著者による出色の人物批評

いっぴきの虫 (文春文庫)

いっぴきの虫 (文春文庫) 

有吉佐和子松下幸之助東山魁夷杉村春子木村伊兵衛藤山寛美川口松太郎梅原龍三郎……各界の第一人者との対談集。だが、普通の対談とは違う。著者はそれぞれの人物と絶妙な距離感を取りながらも、その懐に飛び込んで通常のインタビュアーではかなわぬ相手の言葉と反応を引き出していく。さりげない会話の中に研ぎ澄まされた刃のような人間観察眼が鈍い光彩を放っている。

結果、単なる対談集を超えた出色の人物批評書となっており、一流の人々の凄みと弱さが見事なまでに文章化されることになった。対話部分と著者による地の文のバランスも人によって異なっていて、そこに巧まざる作意と透徹した批評眼のようなものを感じることが出来る。

ただ本書で最も心を打たれるのは、最初の方に登場する中国の演劇人・趙丹との真心と温情を感じさせる交流だろう。本書あとがきでその中国の友人の死の報せに慟哭する高峰さんの姿が養女の筆によって記されている。ここはほんとうにたまらない。思わずもらい泣きだ。近年、外交問題や爆買い騒動などによって中国人の一般的な印象はあまり良くない。根拠なく日本人を上に見る風潮があるような気がするが、多くの日本人は本書の「趙丹」およびやはり中国人の真心について語る「杉村春子」の章を読んで、ほんものの中国人のこころのあり方についてあらためて考えた方が良いだろう。

また、映画「二十四の瞳」の元子役たちとの交流もひじょうに心温まるものがある。本書でもっとも素の高峰さんを感じるのはオトナになった彼らとの対談においてである。

失われた名盤②『TALK ABOUT THE WEATHER 』 RED LORRY YELLOW LORRY

TALK ABOUT THE WEATHER

TALK ABOUT THE WEATHER   RED LORRY YELLOW LORRY



英国・リーズ出身のゴス/ポジティヴ・パンク・バンドの1stアルバム(1985)。グループ名は「赤いタンクローリー、黄色いタンクローリー」という英語の早口言葉で、日本語で言えば「赤巻紙、黄巻紙」なんだろうかね。

 

神経症的によじれたサイケデリックギター、ゴリゴリ攻める強烈なベースライン、リズムマシンを多用したつんのめる機械ビート、クールでダークなヴォーカル等、最近のクラブでかけてもいいんじゃないかと思えるほど普遍性を感じるサウンド。陰鬱で退廃的で破壊的で痙攣的……言ってしまえばJOY DIVISIONKILLING JOKEの影響下にあるバンドでしょう。

当時、ビジュアル的に地味でもあり同郷の「SISTERS OF MERCY」という大物がいたため、その影に隠れてあまりブレークしませんでしたが、サウンド面ではそれほど引けを取りませんし、ある意味独自のポップセンスを備えたバンドでした。

 

特筆すべきヒット曲があるバンドではありませんが、多くの名曲を残しているのです。僕が一番好きなのはこの曲!

youtu.be

 

 

 

ポール・マッカートニー関西人説

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10年ほど前にビートルズのLet It Beを関西弁に訳してブログに載せたら、ちょっと反響がありまして、それを再掲してみます。ネイティブな方にはやや違和感あるかも。

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「それで、ええやないか」

わてにどないせぇっちゅうねん! ってなったら、

聖母マリアはんが来てくれてな、

ええこと、ゆうてくれまんねん。「それで、ええやないか」

ドツボで、目の前まっ暗闇のわしの、まん前に立たはってな、

ええこと、ゆうてくれまんねん。「それで、ええやないか」。

「ええやないか、かめへん、かめへん」

「ええやないか、かめへん、かめへん」

ほんま、ええこと囁いてくれまんねん。

「それで、ええやないか」


(Let It Be 原詞)


When I find myself in times of trouble

Mother Mary comes to me       
    
Speaking words of wisdom Let it be

And in my hour of darkness

She is standing right in front of me

Speaking words of wisdom Let it be

Let it be Let it be

Let it be Let it be

Whisper words of wisdom Let it be

 

 

「日本も、けさから、違う日本になったのだ」

 

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久しぶりに政治の話をする。

 先の衆院選において、何人かの(リベラルな)純文学作家の方々が反アベ政権の立場から発言していて、ことごとく幼稚かつ的外れで呆れた。文学の言葉が現実への影響力を失って久しいが、その自覚がないままに現実を語る言葉の浅薄さにはもにょんとするしかない。
 まあ、文学者に限らないのだが、現政権への批判者の多くが、安倍晋三は好戦的なナショナリストであり、ナチスヒトラーにも匹敵する独裁政治を進めようとしている…という視点での政権批判を行っている。いわゆる「モリ・カケ」問題に関しても、独裁者が友達を優遇するために官僚に忖度を求めたというストーリーにしたいように見受けられるが、森友の夫婦が詐欺師だったり、安倍夫人が相変わらず軽率だったり、官僚は省益のために平気で公文書をなきものにするなどの事実は浮き彫りにされたけど、肝心の首相の疑惑に関しては半年たっても何ら証拠は出てこず、結局は単なる言いがかりであることが明らかになってきた。
 安倍晋三の反対者たちは、彼が独裁者をめざしているわけではなく、彼なりの「平和な民主国家」を築こうとしているということに目を向けた方が良い。そこを出発点にして初めて、現政権への有効な反駁が可能になるだろう。その中で経済・金融政策に関してはなんとか巧く綱渡りを続けており、外交に関してはむしろ加点が多いことに着目すべきだ。意味不明な「独裁者」批判をし続けても、そう言っている本人の身がいつまでも無事であるという矛盾を国民は大いに嗤っている。個人的に安倍晋三は好きな政治家ではないが、現時点では経済と外交における長期政権のメリットというものをしみじみ実感せざるを得ない。

 

まあしかし、私を含めた国民というものも決して当てにはならない。

 

日露戦争で戦争の継続を訴え、日米戦争開戦時に黒船来航以来の胸のつかえがとれたという日本国民。当時の記録や文章を読むと、戦争責任は、多くの普通の庶民にあることがよくわかる。政治家と軍人の優柔不断と手前勝手なファンタジー(どちらも日露戦争時はその終結をもっとも願ったリアリストだったのだが、昭和になると堕落していた)が、そんな国民の情念を後押しした。

33歳の太宰治でさえ、日米開戦の一報を聞き、

 

 強い光線を受けて、からだが透明になるような感じ、あるいは精霊の息吹を受けて、つめたい花びらを胸の中に宿したような気持ち。日本も、けさから、違う日本になったのだ

(太宰治『十二月八日』)

 

 

などと、頬を染めて熱弁しているくらいだ。他は押して知るべし。文学者カナリアとしてはまったく無能である。

  今回の衆院選では、鳴り物入りの小池党=「希望の党」が盛大にこけたために、ミンシン党を解体した前原誠司という人が揶揄の的になっているが、私は前原さんの蛮勇があってこそ、野党のもやもやした閉塞状況打開のキッカケがつくられたと思う。希望の党も、立憲民主党も、このままではグズグズになる可能性が高いけど、「日本も、けさから、違う日本になったのだ」といえる局面を開いた功績は認めてあげたい。たとえ新たな混迷の始まりだとしても、閉塞よりはマシだろう。ただ、前原さん本人はそうした思慮ではないような気もするけど。

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (後編)

(中編からつづく) 

 

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楽しい宴会の途中でとんでもないことに気付いた。「寝袋持ってくるの忘れた」。バックパックに荷物詰める際、「今回はどの寝袋にしようか?」と考えていいて、結論を出さないまま荷造り終了してしまったのだ。マヌケである。しかし、このピンチも秩父漁協が備品の寝袋を貸してくれて助かった。もう秩父方向に足を向けて寝られない。

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「どこにも寝袋が入っていない!?」


 

翌朝は早朝4時頃から釣り人たちはもぞもぞ動きだし、僕も5時半ごろには起きたら、外では我々の仲間のコーヒーマスターであるアンドーさんが、いい匂いのコーヒーを淹れていた。それをいただき、ダラダラおしゃべりをしていると、いつもやる気満々のシミズさんとヨシダくんはまだ陽があがる前なのに釣り支度して、さっさと川に向かっていった。若いナ。僕も30代ぐらいの時はああだったナ….などと思いながら美味しいコーヒーをすする。頭がしゃっきりしてくる。日の出。よし行こう。だって釣りをしに来たんだから。

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10〜15cmぐらいの水深の瀬とヘチでこれくらいのイワナが何匹か釣れた。


この日も釣り場はいいコンディションだった。1匹目はイワナ。昨日のような食いの浅さもなかった。それどころか沈むフライでは毛鉤を丸呑みされることが多かった。途中、イナガキさんに会ったら、このフライ使ってみて下さいよと奇妙な毛鉤を渡された。釣り鉤に靴ひものような柔軟な革紐を結びつけたその毛鉤に交換してみる。毛鉤の重さでまともにキャストできない。しかも使っているうちに革紐が水を含んでますます投げにくい。しかし、なんとかポイントにポチャンと落とすと、柔らかい革紐はミミズのような、ヒルのような、あるいは逃げ惑う小魚のような、面白い泳ぎ方をする。すると付近にいた魚がそわそわし始める。直後、一匹が辛抱溜まらん!という感じで毛鉤に飛びつき、ロッドで合わせるとずしりと魚の重みを感じる。こんな釣り方で40cm近いニジマスが2匹釣れた。魔性の毛鉤だが、通用するポイントと、あまり反応しないポイントがあった。釣り人に何回も叩かれているような、釣りやすいポイントでは反応が悪いように感じた。

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ニジマスはサイズの割に強いファイトをする魚が多かった印象。

何匹か釣っているとちょっと飽きたので今度は「クロスオーストリッチ」に毛鉤を交換した。日本のフライフィッシング界の鬼才である島崎憲司郎さん考案のこのフライパターンは『フライの雑誌』誌上で発表後、材料のオーストリッチ・ハールが品薄になるなど一世を風靡した(狭い一世だけど)。つくるのが超簡単でとにかくどこでもこの毛鉤を沈めれば釣れる。そうやっているウチにあっという間に昼飯時間が迫ってきた。そこで最後にまたスタンダード・ドライフライ「クイルゴードン」に替え、ライズを拾っていく。チビだけどヤマメちゃんも釣れた。これでニジマスイワナ・ヤマメの3種達成。

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ヤマメ18cmぐらい。かわいいのう。


気がつくとみんな昼飯のために川から上がって、川にいるのはイナガキさんと僕だけになっていた。と、対岸ギリギリで「ボスっ!」と言うライズ。クイル・ゴードンを投げると、「ぱっくり」とスローモーションを見ているような理想的なタイミングで魚が食い付き、ロッドに重みが伝わった。40cmは切るがいい体格のニジマス。「よしっ!満足。これで一区切り。昼食にしよう」
イナガキさんは、まだ釣っている。ホリウチさんもそうだが、このしつこさ、ねちっこさこそがほんとうに釣りが上手い人の特徴であろう。見習いたいものだ。

昼飯はウチダさんがつくる秩父名物みそポテトと、この日の朝にやってきたタナカさんが持ってきたカマスやメアジ、キンアジの干物を焼いた。ことごとく旨い。お腹が満足したら、なんか釣欲も満足してしまったみたいで、ここで解散と相成った。まあ、おっさんたちの体力の限界でもある。

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秩父の山奥で香ばしく焼かれる海の魚たち。


こうして秩父フライフィールド「キャンプデー」の2日間が終わった。次回は来年の5月だが、その前に正月2日の厳冬強化合宿というのもあるらしい。今回のように寝袋を忘れたら凍死しそうだが、可能であれば参加してみたいものだ。

(完)

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (中編)

(前編から続く)

秩父フライフィールドは管理釣り場だ。管理釣り場とは平たく言えば釣り堀である。しかし、この釣り場は自然渓流をほぼそのまま使っている。ポイントにも変化があり、魚の密度が桁違いに濃いことを除けば、いわゆる渓流釣り気分で楽しく遡行の釣りが出来る。

魚は多いし、何度も来ているので、ある程度自分に制約を課す釣りが楽しい。最近はここに来ると「スタンダードフライで釣りをする」ことを自分に課している。

スタンダードフライというのは、それほど厳密な分類ではないが主に19〜20世紀までに確立した主にメイフライ(カゲロウ)を模した毛鉤のことで、「アダムス」「ロイヤルコーチマン」「ライトケイヒル」「クイルゴードン」「マーチブラウン」など、いかにもなネーミングがされている。現存するスタンダードは時のフィルターにかけられて残ったものだから、釣れないわけがない。しかし、最近の良く釣れるフライパターンに比べて、材料が多くてタイイング(毛鉤を製作すること)が面倒なものが多く、垂直ハックル(ボディ前部に巻いた鶏の羽)のドライフライはキャスティング時にくるくる回転してしまい、ティペット(ハリス)がヨレてしまいがち。そういうこともあって最近はあまり使っている人は多くない。しかし毛鉤釣りの要諦の一つは、他人が使っていない毛鉤を魚に見せる(魅せる)ことだから、かえって好都合なのだ。

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今回秩父で使用したスタンダードフライ。上段右向きがドライフライで、右からブロンズ・ウルフ、クイル・ゴードン、アダムス、ロイヤル・コーチマン。下段左向きがウェットフライで、こちらは左から「アレキサンドラ」「プロフェッサー」「シルバー・マーチブラウン」。

 

今回もスタンダードパターンはコンスタントに成果を上げてくれた。土曜日のイブニングタイム、1匹目はドライフライの「クイル・ゴードン」を35cmオーバーのニジマスがもんどり打ってくわえた。クイル・ゴードンは僕がもっとも信頼するスタンダード・ドライフライ(浮く毛鉤)で、ハックルを薄く巻いたものであれば、忍野桂川の神経質なヤマメのライズにも対応できる。その後、ドライフライを「ライト・ケイヒル」「アダムス」「エルクヘア・カディス」と交換し、暗くなって毛鉤が見えなくなってからウエットフライ(沈めるフライ)の「アレキサンドラ」と「シルバー・マーチブラウン」で釣った。前者はテレストリアル(甲虫など陸生昆虫)、後者はカディストビケラ)のイミテーションとされているが、まあ、あまり関係なく良く釣れる。ただ、ドライでも、ウエットでもこの日は食いが浅くて、途中でばれる魚が多く、結局15匹ぐらいだったか。

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最初に釣ったニジマス。毛鉤に躍り上がって食い付き、サイズ以上のファイトぶりを見せた。

結局、とっぷり暮れるまでフライロッドをふってしまった。となりでイナガキさんが慣れないフライキャスティングに苦戦していたが、毛鉤がそれなりの場所のそれなりのポイントで、それなりの流れ方をすればやっぱりちゃんと釣れている。まあ彼は昨夜ホンモロコを39匹も釣りまくって、本気出せば60匹は釣れたとか嘯いていたのだから、そのくらいの苦労はした方がいいだろう。うん、我ながら大人げがない。

 

川から上がってくると、漁協の建物に隣接した屋根付きスペースに食材と飲み物(主としてアルコール)が並び、宴会の準備が整っている。組合長とわれわれの仲間でもある内田さんを始め漁協組合員の方が大型の炭火コンロが2器に火を起こし、支度を調えていた。イワナ、豚肉、鶏肉、ラム、イカ、地場野菜、そして秩父名産絶品ホルモン。さまざまな食材が炭火であぶられ、釣り人たちの胃の中に吸い込まれていく。おまけに秩父の名店の味わいというとてもおいしいカレーライスまで用意されており、まさにお腹いっぱい。大名釣り、といっていいだろう。宴会アトラクションの腕相撲大会では、見るからに腕っ節の強そうな組合長に瞬殺された。ところが日本を代表するフライフィッシングのオピニオン雑誌『フライの雑誌』編集人のホリウチさんは、腕相撲でいきなり両手を使うというあまりにも卑怯すぎる反則技に出た。自分より大人げない男の姿を見て、ほっと胸をなで下ろしたのはここだけの話だ。

 

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イワナ、焼けてます。焼いているのは漁協組合員であり、我々の友だちでもある内田さん。彼はこの世のものならぬ存在が見える特殊能力を備えている。

 

(つづく)

 

 

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (前編)

 

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秩父漁協の駐車場から浦山ダムを眺める。右手崖下の浦山川がフライエリア


先週の土曜日・日曜日は、半年ぶりに秩父フライフィールドで「キャンプデー」に参加した。渓流は禁漁期だが、このフライエリアは漁協管轄の管理釣り場【毛鉤&キャッチ&リリース限定】で年内は釣りが出来る。秩父漁協主催のキャンプデーは、料金5000円の内訳に「土曜日のイブニングの釣り〜晩飯&アルコール(!)〜宿泊〜日曜日終日の釣り」がすべて含まれると言うじつにじつにお得なサービスである。しかも宿泊に際しては漁協の持ち物であるプレハブ小屋を提供してくれる。めんどうなテント張り不要。秩父漁協、ブラボー!!

 

今回はいつもの仲間に加え、私のシーバス・ルアーフィッシング指導員でもあるイナガキさんも参加することになった。

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大盛況だったフィッシング・イラストレーター展。またやって下さい。


じつは前日、そのイナガキさんと日本を代表するフライフィッシングのオピニオン雑誌『フライの雑誌』編集人のホリウチさんと3人で、根津のギャラリーで開催されていたフィッシング・イラストレーター展を覗きに行った。イベントは大盛況でその後、ホリウチさんのたっての要望で3人連れだって吉祥寺の釣り堀カフェ「Catch&Eat」へ。琵琶湖原産ホンモロコは釣って楽しく、食べて旨い。ところが言い出しっぺのホリウチさんが絶不調で、イナガキさんが絶好調。僕もポツポツと断続的にしか釣れなかった。イナガキさんは毎回異なる状況をロジカルに分析しながら、短時間で最良の手を編み出す。さすが凄腕ルアーマン。僕などはどうしても自分がこうあってほしいという希望を状況より優先させて釣りをしてしまう。フライフィッシングの釣り人は、「効率」という言葉を忌み嫌い、往々にして自らの〝浪漫〟に拘泥してしまう傾向がある。いやまあ、そこがこの釣りの楽しさでもあるのだが。

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大人げなく競い合うおっさん2名

その後、翌日朝から秩父で釣りをするというホリウチさんは帰宅したが、午後からゆっくり行く予定のイナガキさんと私は「YONA YONA BEER WORKS 吉祥寺店」で23時過ぎまで酒を飲んで釣り談義。この店はビールが旨いのはもちろんだけど、ソーセージやローストチキンなど料理がことごとく旨いのが良い。お洒落な雰囲気でカップルが多い週末の店内で、どことなく魚臭いおっさん2名は異彩を放っていたといえよう。

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このローストチキンはホント旨い。


翌日午後に所沢駅でイナガキさんと待ち合わせ、秩父方面へ。飯能駅ボックスシートの4000系電車に乗り換えてスイッチバックを過ぎると、次第に車窓の風景が山間部のそれに変わる。正丸峠あたりまでは高麗川沿いに走ってた鉄路が横瀬川に出会うあたりで「芦ヶ久保」駅に到着。駅に隣接した道の駅で、仲間の車が待っていた。秩父フライエリアに到着して、イブニングタイムを待つ。当初、土日とも雨天の予報だったが、なんとか降雨は免れていた。僕とホリウチさんは、仲間内では「晴れ男」として知られる。

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芦ヶ久保駅ホーム。下車したのは我々だけだった。



やがて川から上がってきたのは「吉祥寺の仇を秩父で討ったった」とばかりに鼻をふくらませた日本を代表するフライフィッシングのオピニオン雑誌『フライの雑誌』編集人ホリウチさんだった。

 

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(つづく)