プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

屋上の思い出 〜51年前と30年前の〝Rooftop Concert〟

 

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今日はThe Beatlesにとって最後のセッション、通称の記念日です(1969年1月30日)。クライマックスで屋上まで昇ってきた警官たちに演奏を止められるシーンは、グループの解散や世界的な学生運動の退潮と相まって、多くの人に時代の終焉を印象付けたことだろう。

 

30年ぐらい前にやってたバンドのドラマーが埼玉県の東武東上線某駅前にあるビルのオーナーの息子だった。そんなわけで夏祭りの時期に、そのドラマー宅のビル屋上でビートルズよろしく〝Rooftop Concert〟をやっていた。延々と自分たちのレパートリー(ビートルズストーンズCCRT.REX、クリーム、ウイッシュボーン・アッシュなど)を演奏していると、いつの間にやら祭りに遊びに来たバンドやりたい中高生やロック好きの外国人が非常階段を勝手に昇ってきて、ちょっとした観衆になってくれた。米国人集団の中にいたヒッピーっぽい50代ぐらいの白人ヒゲぼうぼうのおっさんは、ギターを持たせてみるとやたらお上手で、即興でいろんな曲をセッションした。彼がギター一本で披露した「Lucy In The Sky With Diamonds」素晴らしい演奏だった。

 

僕はバンドのリードヴォーカル(&リズムギター)だったのだが、英語ネイティブの前で英語の歌を歌うのはじつに恥ずかしいものである。〝Rooftop Concert〟は3年ぐらい連続でやったけど、結局、警官は一人も昇ってこなかったな。

2019年のロック新譜6選

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2019年bのロック新譜6選

The Winstons『SMITH』
テクニカルだけどユーモアたっぷりのウインストン・サウンドが冴え渡る。ファーストより皿に一歩熟成度を増した。


Big Big Train『Grand Tour』

英国近代史をモチーフとした作風が続く。ややマンネリ化しつつあるところをメンバーチェンジでサウンドのてこ入れを行いながら、着実に進化している。


The Claypool Lennon DeliriumSouth of Reality」 

ファーストアルバムから格段に肩の力が抜けた。やりたいことを自由にやっている。レノンのアート心をクレイプールがテクニカルにサポートしているという感じ。FTBのカバーは面白い。

Howard Jones『Transform』
エレポップ全盛期の勢いを取り戻した快作。とても聴き心地が良く、通勤時間のヘビロテになっていました。しかしサウンドの遊び心や探求心は相変わらず。マニアです。

T字路s『PIT VIPER BLUES』
唯一の国産アルバム。デパート屋上で生(ライブ)で接してからこの二人のアンサンブルが身体のどこかに染みついて締まった。夜一人でヘッドフォンで聴いている。 

PJ Harvey『ALL ABOUT EVE』

舞台「オール・アバウト・イヴ」のサントラで多くの曲がインスト、また舞台女優がヴォーカルで参加している曲もある。しかし、どうしようもなくPJな音像なのだ。ちびりそうなぐらいカッコイイのだ。

ウイークエンド銭湯

 

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2019年11月末で廃業した清瀬市最後の銭湯「峰の湯」

昨年は清瀬市内の銭湯3店が廃業し、とうとう市内で営業する銭湯がゼロになってしまった。
もともと市内の銭湯の多くは5カ所あった大規模な都営アパートの近くにあった。昭和30年代後半、前回の東京オリンピック前に造成されたそれらアパート群は平屋で風呂無しだったのだ。都営アパートの住民は基本的に銭湯に通った。風呂はなかったが3〜4坪ほどの小さな庭が付いていたので各世帯は庭に花壇をつくったり、コンクリを引いて車庫にしたりしていたが、そのうち庭に浴室を増設する世帯が増えてきた。僕が中学生だった昭和50年前後には半数以上の世帯が浴室を増設していたと思う。それでも多くの住民が銭湯に通った。中1の時にわが家を改築した際、しばらくの間僕は銭湯に通った。銭湯の浴槽の中には都営に住んでいる級友がいて「おっす!」と挨拶した。出入り口で湯上がりの女子と鉢合わせしてドキドキしたりもした。都営アパートは21世紀に入ると再開発が進み、次々と高層化された。住民は増えたが銭湯に通う客は激減した。経営者も高齢となり、跡継ぎもいない。結局、市内最後の銭湯が昨年11月末に廃業してしまった。昨年後半「峰の湯」というその銭湯に意識して通った。おじさんが一人で何から何までやっている銭湯で、毎回、見事な刺青の兄さんたちと浴室で一緒になって思わぬ芸術鑑賞を楽しんだ。

市内に銭湯はなくなったが、隣の東久留米市にはまだある。わが家から自転車で10分少々のところに2軒もだ。そのうち1軒の「第二喜多乃湯」に初めて行った。瓦屋根に煙突の昔ながらの風情の建物。お湯は熱め。追加料金無しでサウナを利用できるのがうれしい。浴室のタイル絵は少々変わっていて、黄色と紺色を基調にした太陽に向かって羽ばたいているフェニックスの絵。抽象度が高く南米テイストの現代アートといった感じ。ロビーにはマッサージチェア、清涼飲料水とビール類の自販機、そしてアイスクリームの冷蔵庫がある。

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東久留米市の「第二喜多乃湯」。サウナ無料がポイント高い。

 

「第二喜多乃湯」ということで「第一」があるわけだが、実はそれは清瀬駅前にあった。昨年3月で閉業。いまは「喜多乃湯」はここしかないが「第二」の名称はそのまま残っている。次回はもう1軒の「源の湯」に行ってみたい。こちらは鉄筋コンクリートの店舗ビル兼用の銭湯。煙突はないのでガスで沸かしているのだろう。

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清瀬市中里、柳瀬川のほとりにあった銭湯「伸光湯」。近くにあった都営アパートが数年前に高層化されてから週3日営業となっていたが、2019年秋、いつのまにか閉業していた。



「ヒカシュー 天然のクリスマス」最高でした!

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ヒカシュー 天然のクリスマス

 

今年結成40周年を迎えたヒカシューのクリスマスイベントに二年ぶりの参戦。オリジナルメンバーの井上、山下両氏のイノヤマランドをオープニングアクトに、大槻ケンヂ小川美潮がゲストという豪華ラインナップ。ちなみにイノヤマランドは、今年のグラミー賞にノミネートされているそうです。

ヒカシューをバックに歌われる筋少「日本インド化計画」、チャクラ「福の種」は眼福ならぬ耳福でした!もちろんメインアクトであるヒカシューの変幻自在で強靭な演奏は今回も盛大に炸裂。アンコール最終曲は全出演者総出の「幼虫の危機」。クリスマス間際、冬至の夜に「楽しいな~、幼虫が死ぬなんて~!」の大合唱が響き渡りました。

ヒカシューのインストの迫力はほんとに圧倒的で、今だったらクリムゾンよりヒカシューに一票投じるな俺は。物販で出たばかりの巻上さんの詩集を買ったら、サインをもらいがてらご本人とちょっとお話できて良かった良かった。40年の思い、伝わったかなあ…

来年も楽しみだ!

日経に「星空楽しむ「宙ガール」急増中」のコラム書きました。

12/7付日経夕刊に掲載された「宙(そら)ガール」の記事が、誰でも読めるNikkei Styleに転載されました。見出しは本紙よりこっちの方がマトモになって良かった(^^;) ちなみに一昨夜は「ふたご座流星群」がピークだったようですが、具合が悪くて観測できず...。

 

style.nikkei.com

 

『花の命はノー・フューチャー ─DELUXE EDITION 』(ちくま文庫)を読んだよ。

 

花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION (ちくま文庫)

花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION (ちくま文庫)

昨夜〜今日のお昼までは風邪?で寝たきりに近かったので長らく積ん読しておいた本書を読んでいた。たまには風邪をひくのもいいものだ。
英国ブライトンの貧民街に住む鬼才コラムニストの著者のデビュー作で、単行本は発売直後に版元が倒産するという不幸に見舞われた。

僕と同世代かちょっと上のロック好きは80年代に「このクソったれの日本を逃れてロンドンで夢を掴もう」みたいな発想をする人がけっこういて、何を隠そう僕も20代後半にちょっとそんなことを考えていた。結局、安定志向の女性と結婚してしまったのでその目論見は頓挫したが、とりあえず新婚旅行はロンドンに行った。

セックス・ピストルズに傾倒した福岡の女子校生だった著者は、すべてを振り切って単身渡英した。旅立ちの空港でろくでなしの父親に渡された手紙に書かれていた「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」という林芙美子が好んだ短詩が本書の題名の由来だ。

 

第2章 ジョン・ライドン編までが単行本収録分で、その後の第3〜4章のおよそ200ページ分が文庫での追加収録。だからDELUXE EDITIONというわけ。本編より追加収録の方が多いのはCDでも良くあるよね。

 中身は著者が身近なワーキングクラスのリアルな生活と人物が活写された短いエッセイ集で、クールでな視線でネガティブな現実が実に清々しく、渇いたユーモアや哀感とともに語られている。

単行本収録分の2章までの文章は荒削りだが妙な色気があり、3章以降(著者のブログ記事も含まれている)は個性的だが練れた文章で実に読ませる。ほとんどが個人的な生活感や音楽の話題だが、一編だけブレア政権でアイルランド和平に力を尽くし「ベルファスト合意」に持ち込んだ立役者である元北アイルランド担当相Mo Mowlam女史の人生を綴った一文がある。彼女の人生は英国でテレビドラマになり、高視聴率を誇ったというが、著者の一文も実に魅力的な人生を描いている。この一文を読むために本書を購ってもいいくらいだ。

著者は本書出版後、子供を産み、保育士の資格を取り、現在もブライトンの貧困家庭の子供の面倒を見る保育士として働いている。そこらへんは旧著『アナキズム・イン・ザ・UK――壊れた英国とパンク保育士奮闘記』に書かれているらしい。
近年は『子どもたちの階級闘争』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』などで日本の出版賞を多く受賞しており、2017年に書き下ろした『いまモリッシーを聴くということ』は僕の個人的必読リストに入っている。日本のメディアで政治・経済面でのオピニオンも数多く発しており、多くの文化人から支持もされて文筆家としての名声を確立した感もある。

 

しかし名声を得た現在も、ブレイディみかこさんは保育士として貧しい子どもたちと社会の矛盾に向き合い、一方でブライトンの貧民街に癌サバイバーでトラック運転手のアイルランド系配偶者と息子さんとともに暮らし、夜中にパンクロックを大声で歌ってしっかり者の中学生の息子さんにたしなめられる……という変わらぬパンクな人生を過ごしているらしい。GOD SAVE THE みかこ!