プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

令和元年台風19号雑感

 

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与党の責任者の一人である二階さんが「まずまず」とか人に聞こえるところで言ってはダメなんで、それはあやまったほうがいい。一方で伊勢湾台風(死者約4700)や狩野川台風(死者・行方不明1200以上)に比せられ、「100年に一度」の大雨を降らせた台風19号なので、政府内では最悪数百人規模の死者が出る可能性も想定されていただろう。僕もそう怖れていた。風害対策、ガラス飛散対策、照明・電源・水・食料確保、野営準備などいつになく準備を怠りなくした。

それが「まずまず」で済んだということは、昭和の時代に比べて防災の実践がはるかに進んで国民の生命が守られているということなのは間違いない。こうした側面では時代は確実に進歩し、良くなっているのだ。

10月8日13時に台風19号来襲に向けた情報連絡室を内閣府に設置して以降の政府・自治体の連携(警察、消防、自衛隊の動き含む)も、千葉県を壊滅的に叩きのめした前回の台風15号の反省を踏まえてか、わりとスムーズだったように思う。

19号上陸後の荒川・隅田川や江戸川・利根川相模川のダム放水のタイミングについては「中の人」たちの不眠不休の尽力とおそらくはギリギリの所での決断によって、最悪のケースである首都圏水浸しを阻止できた。絶望的な想定もされていた江戸川区は結局のところ水没を免れたし、多摩川も堤防がない二子玉川や下水設備のオーバーフローという人災を蒙った武蔵小杉以外では話題になるような水害はなかった。15号と違って風害がひどくなかったことも幸いした。

一方で長野、栃木、福島、宮城各県などの水害はかなりひどく、特に水害をそれほど想定していなかったと思しき長野市千曲川の氾濫で北陸新幹線E7系・W7系車両が水没している光景には驚かされた。長野市在住の知人も命からがらの目にあっており、肝が冷えた。

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水没する新幹線車両。Abema NEWSより。

台風19号に対して冷静に考察できるようになった今、二階さんの(まるで党内の内輪話みたいないつもの)不用意な発言内容や安倍首相が台風ではなくラグビーについてツイートしたなどと言ったどうでも良い批判ではなくて、実際の被害状況をつぶさに検討しながら都道府県・市町村単位であらためて防災対策の見直しを行うと良いだろう。自然災害に対する防災、避難等の災害対策の核となるのはあくまで自治体だ。中央政府はあくまで支援母体であり、余計なリーダーシップは必要ない。福島第一原発事故時の菅直人首相と現場の軋轢を思い出してみると良い。聖人のような為政者が民を危機から救うのは神話とかおとぎ話の世界での出来事。危機が訪れたときこそ淡々と事を運ぶのが現代政治家の要諦だ。