プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

人物

利休忌に「へうげもの」を読み返そうかと考える。

今日は利休忌で、その弟子であった「(古田)織部の日」でもあるという。 慶長4(1599)年の今日、千利休を継いで豊臣秀吉の茶頭となった古田織部が、亡き師を想って自分で焼いた茶器を用いて茶会を催した。織部焼の始まりである。 その師弟二人が重要人物と…

アマチュアとして生きる。

体験という言葉の空しさ。体験とは実験ではない。それは人為的にひき起こすこともできぬ。ひとはただ、それに服するのみだ。それは体験というより、むしろ忍耐だ。ぼくらは我慢する──というよりむしろ耐え忍ぶのだ。あらゆる実践、ひとたび経験を積むと、ひ…

老人と子供のポルカ〜筒井康隆『老人の美学』とブレイディみかこ『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』雑感

筒井康隆『老人の美学』とブレイディみかこ『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。年明け早々にこれら話題のベストセラー本2冊を読んでみた。 それぞれ同じ本を読んだ人とじっくり語り合いたくなる良書だが、老人と子供という人生の両端について書…

『花の命はノー・フューチャー ─DELUXE EDITION 』(ちくま文庫)を読んだよ。

花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION (ちくま文庫) 昨夜〜今日のお昼までは風邪?で寝たきりに近かったので長らく積ん読しておいた本書を読んでいた。たまには風邪をひくのもいいものだ。 英国ブライトンの貧民街に住む鬼才コラムニストの著者のデビ…

ジョン・レノンの逆襲

www.youtube.com 今日はジョン・レノンの誕生日である。生きていれば79歳。 ビートルズ後のジョン・レノンの音楽がオノ・ヨーコと込みで語られることにとても抵抗がある。僕はむしろジョンの音楽活動のフォーカスを鈍らせた主犯がオノ・ヨーコだと考えており…

『松本清張ジャンル別作品集(1) 武将列伝』を読む。戦国から平和な時代へ。変革期を生きた武将たちの栄光と零落

松本清張ジャンル別作品集(1) 武将列伝 (双葉文庫) 先日、三谷幸喜監督「清洲会議」をテレビ放映していて、放映前の番宣で三谷監督自身が「丹羽長秀がこれだけクローズアップされた映画は他にありません!」と言っていて、確かにそうだなと思った。しかし、…

「全裸監督」8月のファンタジー

8月の個人的ハイライトといえば、やはりNetflix「全裸監督」の公開だろう。これは実に良くできたドラマで、十分な資金と時間をかけて、そして何よりスポンサーや世間への過度な忖度さえなければ、日本でもこれだけのレベルのドラマを製作できるのだと、あら…

先週土曜日の日経新聞に「片頭痛」の健康コラムを書きました。

先週土曜日の日経新聞に自分自身も悩まされている「片頭痛」に関する健康コラムを書きました。夏から秋の温度変化、気圧変化が激しい時期は片頭痛持ちにとってつらい季節なのです。でも、敵の正体さえキチンと知れば決して恐れることはありません。そういう…

夏が来れば思い出す〜ファーブル、林達夫、きだみのる

ファーブル昆虫記 10冊セット (岩波文庫) ※やっぱり「虫」ではなく、「蟲」をタイトルに使って欲しい!(本文参照) ファーブルは高齢になると年金による収入がなく生活は極貧であったと言われている。昆虫記ほか科学啓蒙書の売れ行きもさっぱりであった。85…

日経夕刊に21世紀に伝える江戸の工芸品について書きました

www.nikkei.com 風鈴、三味線、紋章上絵…27日土曜日の日経夕刊に、江戸の伝統工芸を現代の智慧でよみがえらせる職人の方々について書きました。いずれも技にこだわりながらも、現代人である自分自身が楽しむことを重視しており、しかも自分たちの技を他人に伝…

新編集で文庫化された坂口安吾「不良少年とキリスト」を読んでみた。

不良少年とキリスト (新潮文庫) 新潮社からはもともと「不良少年とキリスト」という戦後すぐに書かれたエッセイを収録した単行本が発刊されており、その中の数編は新潮文庫の「堕落論」に収録されている。本書はその重複分をのぞいた作品に、2018年に発掘さ…

『風林火山』のページをめくりながら、亡くなった橋本治のことを思った

掃除をしていたら本棚から井上靖「風林火山」が落ちてきた。掃除の手を止め、ぱらぱらとめくってみる。大好きな小説である。しかし、特に時代小説、という感じを受けずに読んでいる。武田信玄と山本勘助、そして由布姫の、共犯関係のような、三角関係のよう…

「恋と革命のインドカリーの日」なので『中村屋のボース 〜インド独立運動と近代日本のアジア主義』雑感。

中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義 「リベラル保守」の論客としてメディアでも盛んに発言されている中島岳志氏の出世作が本書だ。過激なインド独立の闘士・ラース・ビハリ・ボースが、日本に亡命し、第二次大戦に突入していく日本の国情…

「二十歳の原点」の高野悦子さん(と村上春樹)が今年70歳になったことに気付く

二十歳の原点 (新潮文庫) ふと、「二十歳の原点」の高野悦子さんが今年70歳になったことに気付く。 1969年に20歳で(おそらく)鉄道自殺をした立命館大学生・高野悦子さんの日記をまとめた「二十歳の原点」。いわゆる政治の季節における煩悶と挫折、そして自…

『だれがコマドリを殺したのか? 』を読んで、大阪万博の年にイーデン・フィルポッツと出会ったことを思い出す。

だれがコマドリを殺したのか? (創元推理文庫) イーデン・フィルポッツの名を知ったのは、1970年、大阪万博の年だった。僕は8月上旬に兵庫県伊丹市にある祖父母が同居する伯父の家に泊まって、一緒に来た父と大阪・吹田市千里丘陵にあった万博会場に3日間ほ…

NETFLIXのオリジナルドキュメンタリー『リマスター:ロバート・ジョンソン』雑感。あるいは私の「27クラブ」

www.youtube.com NETFLIXのオリジナルドキュメンタリー『リマスター:ロバート・ジョンソン』を見た。 ジョンソンに関してはかなり研究も進み、私も伝記やドキュメンタリーに接しているのでこの番組にはそれほど目新しい情報はなかったが、最新の研究成果を…

『The White Album』 Morgan Jamesが素晴らしいぞ!

youtu.be 今日は短めの文章を数こなす仕事だったので、なにかいいBGMはないだろうかと探して見つけたのがこれ。ミュージカル女優でR&B系ヴォーカリストでもあるモーガン・ジェームスによるビートルズ「ホワイト・アルバム」の全曲カバーである。モーガン…

今は亡き釣り人のために。

AMAZING GRACE for Mr.T サクラマス釣りの男性流され死亡 福井市の九頭竜川、1人は救助 | 事件・事故 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE 昨夏、友だちのIさんに紹介された大阪のTさんと言う知り合いの釣り人が、先月、サクラマス解禁で訪れていた九頭竜川…

梅原猛『海人と天皇 ~日本とは何か~』再読

先日亡くなった梅原猛は、イマジネーション豊かな古代史への視線で歴史のタブーに挑んできた。聖徳太子、柿本人麻呂の怨霊を古代史に持ち込んだその力業は歴史学的には問題が多いのだが、古代史の文脈にそれまでになかった視点を提供した偉業には違いない。…

アゴタ・クリストフ『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』にやられる。

読もう読もうと思ってなかなか読めない本を出張の機会に読むことが多い。出張中はほとんど残業というか、夜の用事がないのでむしろ読書が捗るというわけだ。 今回はこのアゴタ・クリストフ著『悪童日記』、そして続編である『ふたりの証拠』と『第三の嘘』の…

橋本治が死んで、『蓮と刀』が残された。

蓮と刀 蓮と刀―どうして男は"男"をこわがるのか? 橋本 治/作品社 (1982/05) 橋本治の死に、ジョン・レノン、伊丹十三、デヴィッド・ボウイの死と同様に、重いボディーブローをくらったような気分でいる。何を書いたらいいのかわからないので、ほとんど自動…

有楽町の元パンパンと敬虔なクリスチャン女性記者と父

有楽町のパンパン 年末になると思い出す父のエピソードがある。今年はある有名な報道カメラマンのセクハラ騒ぎもあって余計にそのエピソードを思うことになった。 4年前に84歳で死んだ父は、元朝日新聞社経済記者で、40代前半からは編集委員という肩書で自…

「私は高校野球というのが実に吐き気がするほど嫌いです」〜伊丹十三『女たちよ!』の思い出

女たちよ! (新潮文庫) 自分がコピーライター、もしくはライターと呼ばれる仕事をするようになったきっかけはなんだろうと考えると、父親が本好きであったことがまず思い浮かぶ。わが家にはそこらへんの街の本屋より本があったし、団地住まいだった頃は家に入…

『評伝 管野須賀子 ~火のように生きて~』を読む。

評伝 管野須賀子 ~火のように生きて~ 高校時代の日本史の授業で、自分が関心ある日本史上の出来事を調べて発表するという課題があり、僕は大逆事件を選んだ。当時、マルクスや社会主義への興味が強くなっていたからだと思う。確か「足尾鉱毒事件」とどっちに…

ほんとうに「クイーンは日本の少女たちが発見した」のか? 

大島弓子『ほうせんか・ぱん』(1974年)より 世間ではクイーンの伝記映画が盛り上がっていて、その語られる文脈の中で「クイーンは日本の少女たちが発見した」というものがある。ほんとうだろうか? 確かにデビューアルバムは本国で不評だったようだが、セカ…

日本経済新聞10/27夕刊オフナビに「中高年『エレキ愛』沸騰」を書いたよ。

先週土曜日の日本経済新聞夕刊に「中高年のエレキ愛」をテーマにしたコラム記事を書きました。 www.nikkei.com

銅像になってしまった園長先生

私の出身幼稚園の門の所に創立者夫妻の銅像が建っている。 園長夫妻の銅像。妻が園長。夫はおそらく理事長だったんだと思うが、園児の前にはほとんど登場することはなかったので顔はまったく覚えていない。 わが家から1kmもない所で隣にマルエツがあるため、…

『サイコパス』中野信子(文春新書)雑感

サイコパス (文春新書) 先日、友人とサイコパスに関する雑談を交わし、そういえばサイコパスってわかるようでよくわからないよな….と言う思いにかられ、一昨年ベストセラーとなった本書を手に取った。一読、サイコパスについて現在わかっていることが実にわ…

ミカドの肖像

天皇家の戦後は、皇太子の訪欧(昭和28年3月~10月)、そして浩宮の留学と英国詣でがつづいている。欧米からみると、裕仁以来の天皇家の欧化は彼らの安全保障にとって好ましいものと判断されてきた。 ある意味では天皇家自身も、京都に閉じ籠もる方策の別の…

ポドルスキの活躍を見て2006年ドイツ・ワールドカップと中田英のことを考えていた

こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生死と何変わることはない。ただ、人の生死に意味や価値があるかのような言説が、人の世に行われてきただけだ。従ってこう…