プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

ドルジェル泊の舞踏会を新訳で読んだよ。

ドルジェル伯の舞踏会 (光文社古典新訳文庫)

ドルジェル伯の舞踏会 (光文社古典新訳文庫)

 

フランス心理小説の極北であり終着点、小林秀雄堀辰雄三島由紀夫らに大きな衝撃を与えた『ドルジェル伯の舞踏会 』。三島の『盗賊』はこの作品のオマージュだろう。

新訳が出ていて、なんと従来の作者の死後にジャン・コクトーらが手を入れた「初版」ではなく、ラディゲが病床で校正した「批評校訂版」を底本とした初の翻訳ということなので、さっそく読んでみた。コクトーらは校正・校閲を超えた改編を行った可能性が指摘されており、本作とコクトーとラディゲの合作と言い切る研究者もいるぐらいだ。


前に新潮文庫版を読んだのは仏文科の学生だった40年近く前なので、ディティールは忘れているが、確かに「あれ?(こんな記述あったかな?)」と思う箇所がいくつかあった。今後はこちらの版が本作のスタンダードとなっていくのかもしれない。翻訳文はとても読みやすい。

光文社古典新訳文庫はどれもそうだが、解説も思い入れたっぷりで読み応えがある。次は大学の先輩である中条省平氏が訳した「肉体の悪魔」の新訳も読んでみたい。