プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実 <新装版> ジェフ・エメリック

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

 

Abbey Road』のリマスター版を買ったせいもあり、今月はビートルズを良く聞いた。

今聴くとスカスカでシンプルなビートルズサウンドだが、半世紀近く聴いていても、その隙間から未だに新発見が顔を覗かせるからすごい。ジェフ・エメリックは、メンバーの(特にポールの)クリエイティビティが高まった中期〜後期ビートルズにおいて、ジョージ・マーティンとともにテクニカルサイドからそのマジックを構築した人物。エンジニアの立場からビートルズの当時の内部事情を赤裸々に描いた本書は刊行当時話題を呼んだ。どちらかといえばポール擁護派の著者なのだが、ポールに関しても忌憚のない意見が書かれているし、ジョンの凄さも素直に感嘆している。そんなエメリックも1年前に亡くなってしまった。


ビートルズ初期の2枚「Please Please Me」「With the Beatles」は、コーラスを含めて、ほとんど一発録り、スタジオライブといえる作品だが、このバンドがデビュー当時から“完成“していたことに今更ながら驚かされる。特に当時22歳であったジョン・レノンの老獪とさえいえる歌いぶりはすごい。この時代のエンジニアはノーマン・スミス。後にシド・バレットが抜けたピンク・フロイドサウンド構築に関わった人物である。彼は聞き手の意識を盤面に吸い込むライブ感の演出が得意であった。ビートルズは「あの4人」がグループを組んだことも奇跡に近いが、ベストなタイミングで優れたスタッフが近くに居た僥倖を思うと、なんだか言葉を失う。

ビートルズはいつまで経っても僕にとっての「謎」なのだ。