プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

フィリップ・ロスが亡くなった。

 

フィリップ・ロスが亡くなったそうだ。
大学でフランス文学を専攻した私だが、2年生ぐらいから同時代の作家ではアメリカ文学のほうが面白いかもと思い始めてアップダイクやピンチョンやヴォネガットやロスなどを読み漁った。『さようならコロンバス』『ポートノイの不満』『乳房になった男』などは集英社文庫で出ていたので入手しやすかった。

素晴らしいアメリカ野球 (新潮文庫)

素晴らしいアメリカ野球 (新潮文庫)

こちらはロスの本領発揮の大問題作。長らく絶版状態だったのが「村上柴田翻訳堂」シリーズとして新潮文庫で復刊された。
原題は「The Great American Nobel」であり、なが〜い冒頭部分で〝偉大なるアメリカ小説〟についてアイロニカルな言葉のマシンガンが炸裂。この部分の翻訳はたいへんだったろうなと思う。この長すぎる前置きを過ぎればあとはハチャメチャ激流のストーリーに身を任すのみ。おもしろいよ〜!

 

失踪―ボブ・ディランをつかまえて (扶桑社ミステリー)

失踪―ボブ・ディランをつかまえて (扶桑社ミステリー)

続いてこちらの作品はなんとハードボイルド探偵小説仕立てなのだが、ロスらしい諧謔ベトナム戦争で傷ついた若者たちの生態がえぐり出されている。そういえばディランがノーベル賞を受賞したとき、ロスこそアメリカ作家としてノーベル賞にふさわしいという声が出ていた。

 

このほか映像化された『ゴースト・ライター』のほか、『解き放たれたザッカーマン』『解剖学講義』で構成されるザッカーマン三部作も広く勧めたいところだが、古本でしか入手できないかもしれない。復刊を望む。

 

解き放たれたザッカーマン (現代の世界文学)
 
解剖学講義

解剖学講義