プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

『兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)』を読んだよ。

兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)

兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)

 

中公新書の中世モノの充実は歴史ファンとして喜ばしい限り。いつも言っているのだが、日本史で一番おもろいのは、やはり鎌倉~室町期だ。個人的には現在の日本人のメンタリティみたいなものはこの時代に形作られたと思う。その例証の一つが「徒然草」という作品で、本書は作者である兼好法師の正体を通説の検証を通して薄皮を剥いでいくような手付きで明らかにしていく。

家柄に箔を付けたい室町時代吉田兼倶という人物が家系図捏造によって歴史を大きく歪曲したことまでを白日の下にさらし、激動の時代を巧みに権力者を乗り換えながら要領よく生き延びたちょっと俗っぽい兼好像が浮かび上がってくる。僕はそう言う兼好にとても親しみを感じる。

ツンデレな著者の文章もなかなか味わいがあり、小気味も感じられ、途中ちょっと退屈なパートもあるのだが、楽しく読了することができた。

冥府の兼好法師も、もし本書を読むことができれば喝采をおくったのではないか?