プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

「ムーミンパパの思い出」再読

新装版 ムーミンパパの思い出 (講談社文庫)

 

映画「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」が公開されたり、仕事場に近い銀座松屋ムーミンのチャリティ・ピンバッジが頒布されていたりと、今冬はなにかとムーミンを意識することが多かった。で、久しぶりに手に取ったのが「ムーミンパパの思い出」。初読は小学校3〜4年だったはずだから、すでに半世紀近く前だ。

この作品はパパが自分の人生を振り返って自伝を書き、その途中経過を息子たちに読み聞かせるという趣向だ。ヘムレンの孤児院を脱出したムーミンパパ(当時はパパじゃないけど)が、発明家フレデリクソンやスニフの父、スナフキンの父らとあちらこちら彷徨し、冒険を企てる一種のビルドゥングス・ロマンと読める。若き日のムーミンパパはとてもロックでヒッピー的な性格で、登場人物たちのフリーセックス的な家族関係もほの見えてなかなか興味深いものがある。本作でスナフキンがミイの弟であることが明かされる。

最後のムーミンママとの出会いは(笑っちゃうほど)衝撃的だし、エンディングの一節は現代の中高年にも刺さるものがある。

「太陽はいま、あがろうとするところです。(中略)あたらしい門のとびらがひらかれます。不可能を可能にすることもできます。そして、もし人がそれに反対するのでなければ、どんなことでもおこりうるのです」

シリーズの中でも再読に耐えうる名作なのは間違いないだろう。