プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

葛西善蔵と酒が飲みたい。

葛西善蔵と釣りがしたい―こんがらがったセカイで生きるための62の脇道



先日、むかし部下だった男から電話があった。お互い前後して会社を辞めたので10年以上会っていない。要は、僕と飲みたい、昔迷惑かけたことをいろいろ反省してる…という趣旨なんだが、なぜ今電話してきたかよくわからない。おそらく本人にもわからないのだろう。いくばくかのアルコールの勢いを借りている様子でもある。

酒癖が悪い男で周囲にいろいろ迷惑をかけていた。基本的に賢いし、まじめにやればいい仕事をする。彼による宮台真司さんのインタビュー記事なんてちょっとしたものだった。確か宮台さんもいたく満足されていたはずだ。まあ、しかしメンタルにいろいろ問題を抱えていて、上司としてはハラハラしながら付き合った。ただし向こうがよく懐いてくれたし、僕の言うことは比較的よく聞いた。なんというかまさに破滅型私小説作家の葛西善蔵の再来みたいな男でどこか憎めない。私もたいがいに大人げない人間だが、彼と接していると分別くさいコンサバおじさんになった気分だった。
で、先ほどかかってきた電話の受け答えがまさにその当時の会話を冷凍保存したものを解凍するような不思議な感覚だった。ぜんぜん変わっていない。どこかで野垂れ死にしていても不思議ではない男だったので、元気そうでちょっとうれしかった。ちょっと、だけど。