プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

The Beach Boys -- TODAY!

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夏の終わりの一枚を選べと言ったら、僕はやはり『The Beach Boys - TODAY!』なのである。

 

学校で6時間も授業を受けたんだから、今日はもう十分さ。

ラジオのダイヤルをちょっと回して、いろいろとチューニングしてみる。

踊りたいんだ、今の気分にぴったりの曲で!

踊ろう。踊ろう、踊ろうよ。ばっちりな曲でさ!

ビーチボーイズダンス・ダンス・ダンス』)

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輝きの横に静かに佇むメランコリー。それがビーチボーイズのサウンドの本質。1990年代以降に名作アルバム「Pet Sounds』の評価が高まり、能天気なサーフィンバンドの汚名が雪がれつつはあるが、個人的に「Pet Sounds』偏重気味のBB評価はちょっと気に入らない。それ以前のカリフォリニア〜ンなビーチボーイズにこそ、ポップミュージックのマジックがたくさん詰まっている。上記のアホっぽい歌詞が、あのコーラスとサウンドに包まれた時、ブライアン・ウィルソンの魔術がいつのまにか傷ついた私の心をぎゅっと鷲掴みにするのだ。

 
僕が大人になったとき 子供みたいなことをまだやっているかな? 

あんなことしなきゃ良かったなんて 後悔したりするのかな

同じ音楽を聴いたり ジョークを飛ばしたりするのかな

僕はどんな大人になるんだろう

子供たちの自慢の父親になれるのかな?

それとも石頭の頑固オヤジと思われちゃうかな

遊びに行く仲間に混ぜてくれたりするかな

人生のおわりまでずっと奥さんを愛し続けることが出来るかな 

僕はどんな大人になるんだろう

いつまでも続くことなんて ないのさ

悲しいけれど
 
((ビーチボーイズ『パンチで行こう』)

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原題の「When I Grow Up(To Be A Man)」がなぜ「パンチで行こう」なんていう意味不明な邦題になったのか?...その経緯はわからないけれど、激動の音楽ビジネス業界に揉まれ、ライバル・ビートルズの影に翻弄され、「ボクはこのまま大人になってしまって良いのだろうか?」という焦りと不安の独白と思えるブライアンの歌詞は素晴らしい。その内省的な歌詞が口当たりの良さの中にメランコリーの影が濃厚に浮かぶコーラス&メロディーに乗せて歌われている。社会で忙しくしていると誰しもしばしば自分の立ち位置が見えなくなるときがあるかと思うが、そんな時、この曲の持つ独特な瑞々しい光輝がすっと心に差し込んでくる。50代のおっさんが思わずホロリとしてしまう、まさに「永遠の青春のメロディー」という言葉にふさわしい曲ではないだろうか。
 
♪ Won't Last Forever
  It's Kind Of Sad...

 

嗚呼。とにかく夏の終わりに聞く、『The Beach Boys  TODAY!』は格別なのである。

Today! (Mono & Stereo Remastered)

Today! (Mono & Stereo Remastered)