退化する意思
ぼくは小さなころから、妖怪っていうのは、本当にいるのではないかと、両親や先生に質問し、そのおろかさをわらわれたことがあった。
ぼくはその妖怪で、いまはめしを食っているわけだ……。
(水木しげる『ほんまにオレはアホやろか』)
自らに内在する探求心だけで、生き、めしを食う。水木しげるさんは、ある意味、私の理想の人。超マイペースな人なのに、それを許さぬ軍隊社会をどうにかやりすごし、あの激烈な南方戦線で生き抜き、ついでに現地の人と仲良くなり息抜きまでしているのがマジすごい。小学生のころ、こんなことを考えていたという。
大地の神々が僕を守ってくれているというようなことを本能的に考えていたのだ。この地上に生まれてきたからには、その地上の神々が僕を生かしてくれるにちがいない。大地の神々にそむくようなことをせずにいれば、あくせくする必要はない。他の人の目から見れば不真面目でも、ぼくの生き方こそ真面目なのだ。こう考えていた。
(同上)
私も子供の頃はじつはそのように考えていた。ただし大地の神ではなく、もっと漠然としたヴィトゲンシュタイン的な意思、といったものだったが。しかし、今はそう考えたくても、なかなかそうも考えられなくなってしまった。
これは、やはり、動物として退化なのだろうか。やっぱり、そうなんだろうな。