プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

How Soon Is Now? 〜 9月の思い出

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So you go, and you stand on your own, and you leave on your own, and you go home, and you cry, and you want to die

The Smiths「How Soon Is Now?」より)

20代半ばの頃、パンクバンドの雇われベーシストをやった。加入して2週間後にライブの予定があり、そのバンドはオリジナル曲のみで勝負していたので、10曲ほど覚えなければならなくなり、会社から深夜に帰宅後、しこしこ練習していた。というか、ベースラインができていない曲が半分くらいあり、しょうがないから適当にでっちあげた。その際、少々参考にしたのは、アンディ・フレイザーのプレイ。パンクの割にはファンキーな味付けで何曲かは面白い曲想が得られたと思う。ライブの日は、ちょうど9月下旬の今頃の時期であった。当日、中央線沿線にあったライブハウスで開演前に流れていたのはザ・スミスの「How Soon Is Now?」や「What difference Does It Make?」で、妙な緊張感に満たされた心にすっとモリッシーの歌声が染み込んでいった。めんどくさい恋をしていた。女を自分の生きる道上でどのように位置づけたらいいか迷っていた時期でもある。ステージでは太いベース弦に指を叩けつけ、しばしば指先から血をしたたらせながら黙々と曲をこなしていった。頭の中が黒く、あたたかい液体で満たされていき、虚無というものを感覚的に理解できたような気がした。自分以外の音は聞こえない。迷いは解けなかったが、とにかく前に進もうと、思った。

3ヶ月後にそのバンドは分裂したが、今でもベースギターを手に取ると、そのとき創ったフレーズを弾いてしまい、苦笑することがある。ライブを録音したカセットテープはどこにいったんだろう。メンバーたちの消息はわからない。とにかく、あれから四半世紀以上、先に進むことができた。ところで上の歌詞は翻訳不能だ。意味はとれるが、言葉のリズムとうねりを日本語に写し取ることができない。

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