夏空 〜 Summer's almost gone〜
そろそろ夏も終盤に差し掛かろうとしている。
私は、爽やかな夏空を見るたびにふと思い出すことがある。
小学校4年の時の朝礼。いつものようにS校長先生が、朝礼台に昇り、マイクロフォンの前に立ち、お話を始めようとしていた。綿飴のような白い雲がぽっかりと浮かぶ初夏の青空。S校長は、ふと空を見上げ、そのまま視線を戻し、われわれ児童を見渡した。まぶしそうな、どこか悲しみをたたえているように思える目だった。しかし、口は開かない。どのくらいの時間その沈黙が続いたのだろう。児童はざわめきだし、朝礼台の横に並んだ教諭たちもいぶかしそうに校長の方を覗き見る。その時、校長は言った。「みなさん、今日はとてもいい天気ですね」。そして、静かに朝礼台を降りていった。
その年度に赴任したばかりだったS校長は、穏やかな人柄で、もともと話が短い人だったが、こんなに短い朝礼講話は初めてだったし、これっきりだった。あれは何だったんだろう。その日、S校長が何を思っていたのか・・・戦争に関わる思い出ではなかったか、と最近思い始めている。それも何か不幸な死に関わるような。