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プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

『バルカン超特急』(The Lady Vanishes/監督:アルフレッド・ヒッチコック)を観てみたよ!

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 僕はそれほど映画を観る人間ではないのだが、先日、『オリエント急行殺人事件』を観て感動した勢いを借りて、鉄道ミステリー映画の古典であるこの作品を図書館で借りてきた。原題は「消えた淑女」だが、邦題は鉄道を全面に出しているところが面白い。バルカン超特急のモデルは、おそらくバルカン半島を横断するオリエント急行の事だと思う。

 


(あらすじ)
欧州のバンドリカ(架空の国)で大雪のために列車が立ち往生し、乗客達はごったがえす駅ホテルに宿泊する羽目になる。主人公の米国女性アイリスは、翌朝女友達に見送られ、婚約者が待つロンドン行の列車に乗った。乗車直前に頭にケガを負うが、親切な初老の女家庭教師に介抱される。家庭教師はミセス・フロイといい、2人は親しくなった。ところが、食堂車でお茶を飲んだ後にちょっと眠ったアイリスが目覚めると、フロイの姿がない。そればかりか、同じコンパートメントの乗客たちは、そんな初老女性は見ていないという。乗り合わせた医師は頭を打った後遺症で記憶障害を起こしているに違いないとアイリスを慰める。しかし、ホテルで少々因縁があった若い男ギルバートだけは彼女の言葉を信じるのだった……。

 まさに、原題『The Lady Vanishes』通りのストーリーが展開される。映画の重要なモチーフは第二次大戦直前の国際的緊張だ。たとえば「バンドリカ」などという架空の国名を使わざるをえない事情は、かえって映画のミステリアスな雰囲気作りに役立っている。ちなみにバンドリカ国民が話しているのはドイツ語である。
 トリックはそれほどフクザツじゃないし、現在のミステリー好きが見るとシンプルすぎると感じるだろう。「消えた女性の行方」「なぜ消えたのか」については僕は途中でだいたい見通せた。それでもヒッチコックのストーリーテリングはやはりこの時代でも見事だし、トリックの骨子が見えてきても、乗客である不倫カップル、クリケット狂の英国紳士二人組、イタリアのマジシャン一家、ドイツ語を話す男爵夫人…など、登場人物への興味と謎に引き込まれていく。役者も上手い。主人公アイリスを助けるちょっと軽い感じの二枚目ギルバートを演じるマイケル・レッドグレイヴ(Michael Redgrave)は、『オリエント急行殺人事件』でデベナム夫人を演じたヴァネッサ・レッドグレイヴ(Vanessa Redgrave)の父親である。また、ところどころ模型も使っている鉄道シーンは興味深い。車両を切り離す連結器や支線分岐の様子などを見るのは、鉄オタ的に楽しい。

それにしても僕が見たDVDの字幕はかなり酷かった。ところどころGoogle翻訳じゃないかという意味不明の直訳箇所が見受けられた。また、ドイツ語を話しているシーンでは「(外国語)」という表示が出るだけ。ちゃんとした字幕か、吹き替えでもう一度みたいものである。