プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

失われた名盤④『C-ROCK WORK』 ZELDA

C-ROCK WORK 1987年発表の第4作。ムーンライダースの白井良明がプロデュースした前作「空色帽子の日」(1985年)は、統一感溢れるサウンド構成によるコンセプチュアル・アートとも言える傑作で本作と甲乙つけがたいわけですが、本作も元四人囃子の佐久間正…

『絶滅の人類史〜なぜ「私たち」が生き延びたのか』(更科功 著)雑感

絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書) 人間は万物の中で最もすぐれているものとされていた時代にはしばしば「万物の霊長」という言葉が使われた。最近はあまり使う人がいなくなったが、本書を読むとその理由がある程度理解できる。 …

S・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』新訳版を読んでみた。

ワインズバーグ、オハイオ (新潮文庫) 先日立ち寄った本屋で新訳を見つけたので買ってみた。かなり以前、小島信夫訳で読んだ記憶があるのだが、「なんだかアメリカの小島信夫みたいな小説だな」という印象のかけらだけが残った。アンダーソンはアメリカ20世…

『決定版 邪馬台国の全解決』(孫 栄健著)雑感

決定版 邪馬台国の全解決 邪馬台国というのは、歴史の闇から吹き上がった言わばファンタジーにすぎない。いわゆる畿内説だの九州説だのは、歴史学的にはまったくナンセンスな論争だ。にもかかわらず、新たな遺跡発見の新聞報道などではつねに畿内説と九州説…

ワールドカップと喪失感

われわれサッカーファンは、4年に一度、ワールドカップ大会の歓喜を味わうわけだが、同時に大会の終幕とともに大きな喪失感を味わう羽目になる。2002年日韓大会の時は日本代表が初のベスト16となり、共催国の韓国が3位。そのほか番狂わせがいろいろあって…

「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(伊藤 亜紗 著)雑感。

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書) 子どもの頃、祖父母と座頭市の映画をテレビで見て衝撃を受けた。勝新太郎演じる市が、見えない白目を剥きながらバッタバッタと敵のごろつきを斬り伏せていく。「目が見えないけれど感覚が研ぎ澄まされ…

興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話 (講談社学術文庫) 雑感

興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話 (講談社学術文庫) アンドレア 英雄のいない国は不幸だ! ガリレイ 違うぞ、英雄を必要とする国が不幸なんだ (『ガリレイの生涯』ベルトルト・ブレヒト 岩淵達治訳) 10年ほど前に単行本で出版されていた「興亡…

釣り開始30分前まで、僕は「プログレ」を聴いている。(『フライの雑誌』 第64号〈2004年2月〉掲載)

先日、机の引き出しを整理していたら古いUSBメモリが出てきたので、中を見てみるといろいろ釣り絡みのデータが入っている。その中にその昔『フライの雑誌』に寄稿した元原稿も入っていた。確か「釣りをしない時間」というテーマでエッセイを募集していたのに…

『万引き家族』を見たよ。

gaga.ne.jp 素晴らしく美しい映画でした。 この映画から受けた感銘の詳細を具体的に語ると未見の方々にネタバレしてしまうので、そして多くの方にぜひ真っ白な状態でこの映画を見ていただきたいので、厚い靴下の上から水虫を掻くようなまどろっこしい文章を…

カナリア殺人事件【新訳版】を読んでみた。

カナリア殺人事件【新訳版】 (創元推理文庫) 〝カナリア〟と呼ばれ、数々の浮き名を流す美人女優が自宅で殺され、交際していたことがある5人の男たちに容疑がかかるが、いずれも犯人逮捕の決め手に欠ける。そこで前作「ベンスン殺人事件」を見事解決に導いた…

二度寝の夢

Dream Theater - Pull Me Under 今朝、久々に記憶に残る夢を見た。早朝の二度寝の夢だ。 丸の内付近の仕事が終わって家まで自転車で帰らなくてはならない。疲れているので自転車で帰るのは怠いが、ラッシュ時でもあり自転車を持ったまま電車には乗れまい。歩…

『サイコパス』中野信子(文春新書)雑感

サイコパス (文春新書) 先日、友人とサイコパスに関する雑談を交わし、そういえばサイコパスってわかるようでよくわからないよな….と言う思いにかられ、一昨年ベストセラーとなった本書を手に取った。一読、サイコパスについて現在わかっていることが実にわ…

フィリップ・ロスが亡くなった。

フィリップ・ロスが亡くなったそうだ。大学でフランス文学を専攻した私だが、2年生ぐらいから同時代の作家ではアメリカ文学のほうが面白いかもと思い始めてアップダイクやピンチョンやヴォネガットやロスなどを読み漁った。『さようならコロンバス』『ポー…

『陰謀の日本中世史 (角川新書・ 呉座 勇一 著)』雑感

陰謀の日本中世史 (角川新書) ベストセラーとなった中公新書『応仁の乱』の著者による日本中世史における〝俗説〟や陰謀論を、最新の学説を踏まえて検証した一般向けの歴史解説書。オビには「俗説一蹴!」の煽り文句が躍っているが、著者はどのようなトンデ…

The Feelies『Crazy Rhythms』は素晴らしい!

Crazy Rhythms このところSpotifyでThe Feelies(スペルをみるとフィーリーズなような気がするが、わが国では一般的にフィリーズと呼び習わしているっぽい)のファーストアルバム『Crazy Rhythms』(1980)がヘビロテである。 70年代後半商業主義化したニュー…

東京の釣り堀記事、書きました。

先週土曜日の日本経済新聞夕刊に東京の面白い釣り堀について書きました。ここで紹介しているホンモロコの釣りは5月下旬ぐらいまでお休みで、その間はニジマスとアユの稚魚の釣りとなるようです。としまえんの釣り堀は5月6日までやってます。 style.nikkei.com…

森岡先生が教えてくれたサッカーの楽しみ

www.soccer-king.jp サッカー日本代表ハリルホジッチ監督の解任は今もって解せない。この決定をした責任者である日本サッカー協会会長の田嶋幸三という人は、いったいどういう人なのかをネットで調べてみると、むしろ世界のサッカーをよく知る国際派といっ…

『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』読後につらつらと。

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD 昔、キューピーマヨネーズの広告コピーに「考えてみれば、 人間も自然の一部なのだ。」というのがあった。ライトパブリシティ秋山晶氏の仕事である。1960年代から現在まで、半世紀以上にわたってアートディ…

アガサ・クリスティ『パディントン発4時50分』再々再読

パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 先週、僕が好きな『パディントン発4時50分』のテレビドラマが放映されていたので、それほど期待しないで見てみた。放映されたドラマは予想以上に酷いものだった。 この小説の名探偵はミス・マープル…

Love in Vain

お前は岩場の山羊が子を産む時を知っているか。 雌鹿の産みの苦しみを見守ることができるか。 月が満ちるのを数え 産むべき時を知ることができるか。 雌鹿はうずくまって産み子を送り出す。 その子らは強くなり、野で育ち 出て行くと、もう帰ってこない。 (…

『ボブ・ディラン解体新書』 再読。

ボブ・ディラン解体新書 (廣済堂新書) 2016年度のノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。先日、今年の夏にフジロックフェスティバルで来日することが大きな驚きと共に報じられた(もちろん僕も驚きましたです)。 そして、ディランをめぐるここ数年の流れ…

ビゼーと悪妻

芸術家に悪妻は付きものだ。 ビゼーも悪妻の持ち主だったらしい。 私は17歳の時より思う所あって古典音楽を聴くのをやめたのだが、「アルルの女」は時折聞いていた。 小学生の時、放送委員をやっていたことがあるのだが、「アルルの女」ばかりかけていたら…

『サイバネティックスはいかにして生まれたか』N・ウィーナーの思い出〜流れを読む人。

SF小説の〝サイボーグ〟や近年至る所で接頭辞的に使われる〝サイバー〟という言葉の発祥となったサイバネティクス。この本はサイバネティクスについての解説書ではなく、サイバネティクスを創始した数学者の自伝。天才がどのように生まれるかの貴重な記録で…

『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』雑感

津波の霊たちーー3・11 死と生の物語 今年も3月11日が近づいてきた。 本書は東日本大震災を描くノンフィクションの中でも白眉の一冊。インフルエンザに苦しむ最中に一気読みしてしまった。でもそれが良かった。もし電車の中で読んでたらオッサンの落涙姿を他…

ロックバーの「おもてなし」

日本経済新聞1月24日(土)の夕刊に、外国人が日本の「ロックバー」に関心を示しているという記事を書きました。 www.nikkei.com

「A Hard Day's Night」関西弁訳

The Beatles - A Hard Day's Night - Official Video しんどかった日の夜、犬ころみたいに働いたわい。 しんどかった日の夜、丸太みたいに眠りたいわい。 そやけど、お前のウチ行って、 お前の仕草をみていたら、 なんかごっつ気分ようなってきた。 おう、一…

失われた名盤③ 『Real Moral Fibre』VENUS IN FURS

Real Moral Fibre VENUS IN FURSは英国・サセックス出身のポストパンク世代のグループで、4ピースバンドを経て1985年にデュオ編成でレコードデビュー。実質的にはコンポーザーでマルチインストゥルメンタリストのTimesと名乗る人物のソロプロジェクトと考え…

『へうげもの』、乙に完結す

『へうげもの』、乙に完結す。古田織部という人物にスポットを当てた戦国大絵巻もついに25巻で完結した。いやはや乙な〝最期〟であった。歴史フィクションは、最低限の史実の上でどれだけ遊べるかが勝負なのだが、 その点では極上の作品となった。章タイトル…

『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロ)雑感 〜幻想の「日本」を描く企みとメタ日本人的会話表現の妙

遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫) イシグロの長編としては第1作。未読だったので読んでみた。訳者の小野寺氏は先日亡くなったばかりだ。物語は現在と過去を往き来しながら、淡々と進む。その推進力となっているのが「会話」だ。この作品で語られる過去は戦…

あれから23年。

ヒースクリフ! 私よ、キャシーが帰ってきたわ。ああ、とても寒い。この窓から中にいれてちょうだい。 (ケイト・ブッシュ『嵐が丘』拙訳) 私は久しぶり(10年とか15年のスパン)にあった人から「ぜんぜん変わってないねえ」と言われるタイプの人間なの…