プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

フィリップ・ロスが亡くなった。

フィリップ・ロスが亡くなったそうだ。大学でフランス文学を専攻した私だが、2年生ぐらいから同時代の作家ではアメリカ文学のほうが面白いかもと思い始めてアップダイクやピンチョンやヴォネガットやロスなどを読み漁った。『さようならコロンバス』『ポート…

『陰謀の日本中世史 (角川新書・ 呉座 勇一 著)』雑感

陰謀の日本中世史 (角川新書) ベストセラーとなった中公新書『応仁の乱』の著者による日本中世史における〝俗説〟や陰謀論を、最新の学説を踏まえて検証した一般向けの歴史解説書。オビには「俗説一蹴!」の煽り文句が躍っているが、著者はどのようなトンデ…

The Feelies『Crazy Rhythms』は素晴らしい!

Crazy Rhythms このところSpotifyでThe Feelies(スペルをみるとフィーリーズなような気がするが、わが国では一般的にフィリーズと呼び習わしているっぽい)のファーストアルバム『Crazy Rhythms』(1980)がヘビロテである。 70年代後半商業主義化したニュー…

東京の釣り堀記事、書きました。

先週土曜日の日本経済新聞夕刊に東京の面白い釣り堀について書きました。ここで紹介しているホンモロコの釣りは5月下旬ぐらいまでお休みで、その間はニジマスとアユの稚魚の釣りとなるようです。としまえんの釣り堀は5月6日までやってます。 style.nikkei.com…

森岡先生が教えてくれたサッカーの楽しみ

www.soccer-king.jp サッカー日本代表ハリルホジッチ監督の解任は今もって解せない。この決定をした責任者である日本サッカー協会会長の田嶋幸三という人は、いったいどういう人なのかをネットで調べてみると、むしろ世界のサッカーをよく知る国際派といっ…

『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』読後につらつらと。

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD 昔、キューピーマヨネーズの広告コピーに「考えてみれば、 人間も自然の一部なのだ。」というのがあった。ライトパブリシティ秋山晶氏の仕事である。1960年代から現在まで、半世紀以上にわたってアートディ…

アガサ・クリスティ『パディントン発4時50分』再々再読

パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 先週、僕が好きな『パディントン発4時50分』のテレビドラマが放映されていたので、それほど期待しないで見てみた。放映されたドラマは予想以上に酷いものだった。 この小説の名探偵はミス・マープル…

Love in Vain

お前は岩場の山羊が子を産む時を知っているか。 雌鹿の産みの苦しみを見守ることができるか。 月が満ちるのを数え 産むべき時を知ることができるか。 雌鹿はうずくまって産み子を送り出す。 その子らは強くなり、野で育ち 出て行くと、もう帰ってこない。 (…

『ボブ・ディラン解体新書』 再読。

ボブ・ディラン解体新書 (廣済堂新書) 2016年度のノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。先日、今年の夏にフジロックフェスティバルで来日することが大きな驚きと共に報じられた(もちろん僕も驚きましたです)。 そして、ディランをめぐるここ数年の流れ…

ビゼーと悪妻

芸術家に悪妻は付きものだ。 ビゼーも悪妻の持ち主だったらしい。 私は17歳の時より思う所あって古典音楽を聴くのをやめたのだが、「アルルの女」は時折聞いていた。 小学生の時、放送委員をやっていたことがあるのだが、「アルルの女」ばかりかけていたら…

『サイバネティックスはいかにして生まれたか』N・ウィーナーの思い出〜流れを読む人。

SF小説の〝サイボーグ〟や近年至る所で接頭辞的に使われる〝サイバー〟という言葉の発祥となったサイバネティクス。この本はサイバネティクスについての解説書ではなく、サイバネティクスを創始した数学者の自伝。天才がどのように生まれるかの貴重な記録で…

『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』雑感

津波の霊たちーー3・11 死と生の物語 今年も3月11日が近づいてきた。 本書は東日本大震災を描くノンフィクションの中でも白眉の一冊。インフルエンザに苦しむ最中に一気読みしてしまった。でもそれが良かった。もし電車の中で読んでたらオッサンの落涙姿を他…

ロックバーの「おもてなし」

日本経済新聞1月24日(土)の夕刊に、外国人が日本の「ロックバー」に関心を示しているという記事を書きました。 www.nikkei.com

「A Hard Day's Night」関西弁訳

The Beatles - A Hard Day's Night - Official Video しんどかった日の夜、犬ころみたいに働いたわい。 しんどかった日の夜、丸太みたいに眠りたいわい。 そやけど、お前のウチ行って、 お前の仕草をみていたら、 なんかごっつ気分ようなってきた。 おう、一…

失われた名盤③ 『Real Moral Fibre』VENUS IN FURS

Real Moral Fibre VENUS IN FURSは英国・サセックス出身のポストパンク世代のグループで、4ピースバンドを経て1985年にデュオ編成でレコードデビュー。実質的にはコンポーザーでマルチインストゥルメンタリストのTimesと名乗る人物のソロプロジェクトと考え…

『へうげもの』、乙に完結す

『へうげもの』、乙に完結す。古田織部という人物にスポットを当てた戦国大絵巻もついに25巻で完結した。いやはや乙な〝最期〟であった。歴史フィクションは、最低限の史実の上でどれだけ遊べるかが勝負なのだが、 その点では極上の作品となった。章タイトル…

『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロ)雑感 〜幻想の「日本」を描く企みとメタ日本人的会話表現の妙

遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫) イシグロの長編としては第1作。未読だったので読んでみた。訳者の小野寺氏は先日亡くなったばかりだ。物語は現在と過去を往き来しながら、淡々と進む。その推進力となっているのが「会話」だ。この作品で語られる過去は戦…

あれから23年。

ヒースクリフ! 私よ、キャシーが帰ってきたわ。ああ、とても寒い。この窓から中にいれてちょうだい。 (ケイト・ブッシュ『嵐が丘』拙訳) 私は久しぶり(10年とか15年のスパン)にあった人から「ぜんぜん変わってないねえ」と言われるタイプの人間なの…

『兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)』を読んだよ。

兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書) 中公新書の中世モノの充実は歴史ファンとして喜ばしい限り。いつも言っているのだが、日本史で一番おもろいのは、やはり鎌倉~室町期だ。個人的には現在の日本人のメンタリティみたいなものはこの時代に形…

小澤征爾さんと、音楽について話をする (新潮文庫)  雑感

単行本発売時から気になっていた本書、書店で文庫を見かけたのでようやく手に取ってみた。 タイトル通り村上春樹と小澤征爾の対談集である。小澤の師匠カラヤンをはじめグレン・グールド、バーンスタインといった深く関わり合った音楽の巨人たち、またベルリ…

忙しいと釣りについて考えたくなる。

忙しいと釣りについて考えたくなる。なぜだろうと思う。夢の中にも釣りが出てくる。釣れなくて苦しい。うんうん唸っていると目が覚めるのだ。 フライフィッシングを始めた頃、何気に洋書(アメリカ)の入門書を買ってみた。ちょうど今みたいな繁忙期に仕事…

「ムーミンパパの思い出」再読

映画「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」が公開されたり、仕事場に近い銀座松屋でムーミンのチャリティ・ピンバッジが頒布されていたりと、今冬はなにかとムーミンを意識することが多かった。で、久しぶりに手に取ったのが「ムーミンパパの思い出」。…

葛西善蔵と酒が飲みたい。

先日、むかし部下だった男から電話があった。お互い前後して会社を辞めたので10年以上会っていない。要は、僕と飲みたい、昔迷惑かけたことをいろいろ反省してる…という趣旨なんだが、なぜ今電話してきたかよくわからない。おそらく本人にもわからないのだろ…

丘を越えて 〜『嵐が丘』と前世の記憶

嵐が丘 (新潮文庫) 「エレン、あとどれくらいしたら、わたし、あの丘のてっぺんまで行けるようになる? 丘の向こう側にはなにがあるのかなあ──海?」 「違いますよ、キャシー嬢ちゃん」あたしは答えたものです。「これとおなじような丘が連なっているんです…

高峰秀子著『いっぴきの虫』雑感 〜類い希なる人間観察眼と文才を有する著者による出色の人物批評

〝近年、外交問題や爆買い騒動などによって中国人の一般的な印象はあまり良くない。根拠なく日本人を上に見る風潮があるような気がするが、多くの日本人は本書の「趙丹」およびやはり中国人の真心について語る「杉村春子」の章を読んで、ほんものの中国人の…

失われた名盤②『TALK ABOUT THE WEATHER 』 RED LORRY YELLOW LORRY

TALK ABOUT THE WEATHER RED LORRY YELLOW LORRY 英国・リーズ出身のゴス/ポジティヴ・パンク・バンドの1stアルバム(1985)。グループ名は「赤いタンクローリー、黄色いタンクローリー」という英語の早口言葉で、日本語で言えば「赤巻紙、黄巻紙」なんだろ…

ポール・マッカートニー関西人説

10年ほど前にビートルズのLet It Beを関西弁に訳してブログに載せたら、ちょっと反響がありまして、それを再掲してみます。ネイティブな方にはやや違和感あるかも。 ------------------------------------------------------------------------------- 「そ…

「日本も、けさから、違う日本になったのだ」

久しぶりに政治の話をする。 先の衆院選において、何人かの(リベラルな)純文学作家の方々が反アベ政権の立場から発言していて、ことごとく幼稚かつ的外れで呆れた。文学の言葉が現実への影響力を失って久しいが、その自覚がないままに現実を語る言葉の浅薄…

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (後編)

(中編からつづく) 楽しい宴会の途中でとんでもないことに気付いた。「寝袋持ってくるの忘れた」。バックパックに荷物詰める際、「今回はどの寝袋にしようか?」と考えていいて、結論を出さないまま荷造り終了してしまったのだ。マヌケである。しかし、この…

半年ぶりに秩父フライフィールド「キャンプデー」に行ってきたよ (中編)

(前編から続く) 秩父フライフィールドは管理釣り場だ。管理釣り場とは平たく言えば釣り堀である。しかし、この釣り場は自然渓流をほぼそのまま使っている。ポイントにも変化があり、魚の密度が桁違いに濃いことを除けば、いわゆる渓流釣り気分で楽しく遡行…