プログレッシブな日々

混沌こそ我が墓碑銘。快楽の漸進的横滑り。

『ポーの一族 春の夢』雑感。

ポーの一族 ~春の夢~ (フラワーコミックススペシャル) 萩尾先生は本気だ。 40年前、紅蓮の炎の中に消えた主人公たちとともに、完全に終焉を迎えたと思われていた『ポーの一族』の物語。昨年、40年ぶりの新作が掲載された雑誌がたちまち完売してしまった騒動…

『ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件』 (スキップ・ホランズワース)雑感

ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件 本書は「ミッドナイト・アサシン」と呼ばれる100年以上前に米国で起こった未解決の連続殺人犯を追うドキュメンタリーである。僕は知らない街を歩いていて、モニュメントや石碑があるとつい立…

ウルトラセブンと玉川学園

先日仕事で玉川学園を訪れた。創立者自ら鍬を持って山と雑木林を切りひらいたというキャンパスは、最近では話題のテレビドラマ「やすらぎの郷」のロケ地にも使われており、多彩でユニークな造作の校舎と生い茂る雑木林の豊かな緑でちょっと散歩するのも楽し…

現実の上空2mよりの落下。

モンドがどこから来たのか、誰にも言えなかったに違いない。ある日たまたま、誰も気がつかないうちにここ、私たちの町にやって来て、やがて人々は彼のいるのに慣れたのだった。 (J・M・G・ル・クレジオ『モンド』豊崎光一/佐藤領時訳 冒頭部) このように…

夏がくれば思い出す。死について断片的に。

幼い頃は人の手のことをいろいろ知っているものだ。手というものはいつも背の高さあたりにふらふら住んでいるからだ。マドモワゼルは気持ち悪い手をしていた。 (ウラジミール・ナボコフ『ナボコフの1ダース』より「マドモワゼルO」中西秀男訳) 前回の続き…

ビートルズ来日後、妹の死により家族は分解し、ポールの才能が爆発した。

道路でやっちまおうぜ。誰も見てないし。道路の上でやっちまおうよ。 Why Don't We Do It In The Road - Paul McCartney w/ Neil Young @ Desert Trip, Coachella, 10-15-16 昨年はビートルズ来日50周年だった。シェイスタジアムのライブ盤もCD化・映画化さ…

『ローマ法王になる日まで』を見たよ。

禁教となった日本でのイエズス会士の葛藤と悲劇を描いたスコセッシの『沈黙』を見てから4ヶ月。今度は初のイエズス会出身の現ローマ教皇フランシスコの若き日を描いた『ローマ法王になる日まで』を見に行った。 フランシスコは開明的なPopeとして、ローマ教…

『タモリと戦後ニッポン 』(講談社現代新書) 雑感 〜〝幻想の満州〟から戦後ニッポンを嗤う〜

本書はタモリの足跡を通して 戦後ニッポンの歩みを振り返るというものである。 なぜ、タモリを軸としたのか。 それはまず何より、彼が一九四五年八月二二日と 終戦のちょうど一週間後に生まれ、 その半生は戦後史と軌を一にしているからである。(本書「は…

5/27・28「秩父フライフィールド in キャンプデー」に参加してきたよ!

最近、渓流釣りといえばもっぱら「秩父フライフィールド」ばかりの私。だって近くて、大物含めて良く釣れるんだもん! この釣り場は日本有数の重力式コンクリートダム「浦山ダム」(上写真、橋の奥にちらりと見える)直下の浦山川(荒川支流)の一部区間を利…

【書評】『日本神話の源流』 吉田敦彦〜「吹き溜まりの文化」としての日本文化。神話からたどるその特異性と〝グローバル〟性。

渓流釣りをしていると、川の流れは一様ではないことがよくわかる。エサや毛鉤を魚の目の前に送り届けるためには、なにより流れを読む目が必要だからだ。岩やカーブで押し曲げられ、ねじ曲げられた流れはいくつにも分かれ、渦を巻いたり、時には逆流すること…

Trouble is my business.

きみが僕のことなんかお構いなしで 僕もきみなんか気にもしてなかったとしたら 僕らはきっと 退屈と苦痛のなかを 千鳥足で歩いて行ったことだろう 時折 雨の降るなか 空を見あげ 僕らのうちで悪いのはどちらだろう などと考えながら・・・・・ 翼のある空飛…

奇妙な味のタイトル3題〜『夫のちんぽが入らない』『聲の形』『葛西善蔵と釣りがしたい』

レコードやCDのジャケ買いがあるように、小説本にはタイトル買いがあると思う。 たとえば、高校時代に読んだ『芽むしり仔撃ち』や『性的人間』『万延元年のフットボール』『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』といった大江健三郎作品はタイトル買いだった…

April Come She Will 〜今月の読書録〜

なんだかんだ言って本読んでるな。でも、積ん読も多いんですよ。仕事で読んだ本を除いて、今月読み終わった本をざっと紹介してみる。 聲の形(講談社/全7巻) 大今良時 アニメ映画化もされた話題作。設定からは「障害者差別」「いじめ」というタームが思い…

『海街diary 8 恋と巡礼』読了

1年以上ぶりの第8巻が発売されたので、早速購入して読了。『恋と巡礼』....実際に巡礼する場面が出てくるのだが、さまざまな想像を掻き立てる魅惑的なサブタイトルである。 本巻ではこれまでもっぱらお笑い担当で脇に徹していた三女のチカが新しいヘアスタイ…

どうでもいいこと。

すべてはどうでもよいことだったゆえに、父はどこへ行っても好き勝手にふるまう(テニスクラブにもぐり込む、レストラン評論家のふりをして無料で食事にありつく)ことができた。それを可能にするために、父は自分の持つ魅力を精いっぱい活用した。だからこ…

Der Steppenwolf(荒野のおおかみ)

荒野のおおかみ (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1971/03/02 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 13回 この商品を含むブログ (36件) を見る 街がフレッシャーズであふれるこの季節に、若干の屈託とともに思い出す文学作…

『騎士団長殺し』をめぐる冒険

「歴史の中には、そのまま暗闇の中に置いておった方がよろしいこともうんとある。正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」 (村上春樹『騎士団長殺し』〜 騎士団長の台詞より) 先…

3・20の思い出

www.jiji.com 22年前の本日、僕は有給休暇をとって早朝から妻と河口湖にボートを浮かべて、ルアーでニジマスを釣っていた。午後、すっかり冷えた体をほうとうと温泉で暖めて、帰りのクルマで聴いていたラジオで地下鉄サリン事件を知った。 帰宅して当時の職…

卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう。

熱い心をしばられて 夢は机で削られて 卒業式だと言うけれど 何を卒業するのだろう あーわかってくれとは言わないが そんなに俺が悪いのか ララバイ ララバイ おやすみよ ギザギザハートの子守唄 (チェッカーズ『ギザギザハートの子守唄』作詞:康珍化) 卒…

年度末の差し迫ったこの時期に音楽ファンとしての自分を点検する。

そこにあるものではなく、ないものをプレイするんだ。知っていることではなく、知らないことをやる。変化しなければいけない。それは呪いのようなものだ。 Don’t play what’s there, play what’s not there. Don’t play what you know, play what you don’t…

Memento Mori.

今月が終わる前にどうしてもこの一文を記しておきたかった。 自分の人生のどんなに短い一場面でも、確かに同じ時間を並走していたと思える「人」を失うのは言うまでもないが非常につらい経験だ。好きなミュージシャンや作家、スポーツ選手、俳優などもそこに…

戦争と貧困 〜山田参助『あれよ星屑』へのオマージュ

「貧困」が大きな社会問題となり、実際、奨学金や年金、生活保護などにおいてさまざまな制度的矛盾が露呈してしまっている。 現在55歳の僕が物心ついた頃は、まだ日本は貧しかった。目に見えて貧しかった。わが家はそれほど貧しくはなかったが、身近に貧困家…

震災と電話について

(Jun Teramoto - Flickr: after Tsunami --- Devastation in Haramachi-ku, Minamisōma, Fukushima after the tsunami) こういう私のざまを「精神の荒廃。」と言う人もいる。が、人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生…

『沈黙 ─サイレンス─ 』を見たよ。

……デウスと大日と混合した日本人はその時から我々の神を彼等流に屈折させ変化させ、そして別のものをつくりあげはじめたのだ。 言葉の混乱がなくなったあとも、この屈折と変化とはひそかに続けられ、お前がさっき口に出した布教がもっとも華やかな時でさえも…

鎮静剤としてのジョージ・ハリスン

朝っぱらから言いたかないけど、オレのブルー・スウェード・シューズを踏むなよな。 おい、オマエ! 照れるなよ。俺のフィドルを弾いてみせろよ。 ベートベンをぶっとばせ! チャイコフスキーもたまげるぜ。 (チャック・ベリー「ロールオーバー・ベートベン…

アマチュアについて。

テレビ芸人で絵本作家もやっているという人が、ベストセラーになった自分の作品を電子版で無料にしたということで話題になっていた。 キングコング 西野 公式ブログ - お金の奴隷解放宣言。 - Powered by LINE 要は2000円もする自分の絵本を子どもが気軽に買…

読書について

夥しい書籍が──数百枚の重い粘土板が、文字どもの凄まじい呪の声と共にこの讒謗者の上に落ちかかり、彼は無慙にも圧死した。(中島敦『文字禍』) 何度、本なんかもう読むまいと思ったことか。 他人の思考経路に付き合ったり、法螺話に相づち打ったり、 読書…

「愛しのフリーダ(字幕版) 」を見たよ。

愛しのフリーダ(字幕版) 発売日: 2014/05/30 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る 1961年、リヴァプール。17歳のフリーダは同僚に連れられてキャヴァーン・クラブへ出かけ、ステージで演奏する革ジャンの4人組、ザ・ビートルズの音楽に衝撃を…

音楽という名の魔物

ああ・・・あのソナタは恐るべき作品ですよ。まさにあの部分がね。それにだいたい音楽というのは恐るべきものですよ。 あれはいったい何なのでしょう? 私にはわかりません。音楽とはいったい何なのですか? 音楽とは何をしているのか?音楽は何のためにその…

2016年のR.I.P.

子供っぽい純粋さと大人が作ったスターダムの間で呆然と立ち尽くし 鋼のような風にさらわれていったお前。 笑い者であり、異邦人であり、伝説であり、殉教者である そんなお前だからこそ、さあ、輝くんだ! (PINK FLOYD「Shine on You Crazy Diamond」拙訳…

ジョン・レノンが死んだ日 〜Nobody Loves You (when you're down and out) 〜

www.youtube.com 36年前のことはつい昨日のように思い出せる。僕は大学のラウンジで紙コップのコーラを飲みながらフランス語の試験勉強をしていて、ラウンジに流れるFMラジオ放送の臨時ニュースでジョン・レノンが撃たれた事件を知った。女性ディスクジョッ…

女子にはわからぬヒゲの話。

今週はひたすら原稿を書き、企画をまとめる週ということで、もう3日もヒゲ剃っていない。明日からは外出・出張続きなのできれいさっぱりヒゲを剃り、連日のようにスーツを着ることになるだろう。先日亡くなったキューバのフィデル・カストロは戦闘服とヒゲ面…

師走のパトリシア・ハイスミス

12月になると、パトリシア・ハイスミスの小説が読みたくなる。理由はわからない。よって、以下とりとめなく書く。 見当違いの努力ばかりが繰り返されている精神病院。家庭を守るべき女たちが──生徒はほとんど女ばかりだった──最低限の家事さえ怠って出歩いて…

夢の夢

John Lennon-#9 Dream-Offical Video-HQ 今朝、明け方にものすごく印象的な夢を見たのだが、起きてみると印象ばかりが残って具体的なシークエンスが散逸してしまっていた。 切れ切れになった夢の破片を拾い集めてみると……。 「ルイ王朝風の広間での同窓会」 …

「フライ」と「プログレ」

「フライ」と「プログレ」、そして「アラブの春」 僕の趣味は釣りと音楽鑑賞と読書である。 実に面白味のないラインナップだが、釣りでもっぱら楽しんでいるのはフライ・フィッシング(フライ)だし、音楽はロックを中心に幅広く聞くが、特に英国ロック、プ…

「バーチャル天皇制」を提案する

天皇陛下の〝生前退位〟をめぐり、政府が設置した「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長:今井敬・経団連名誉会長)が今月7日、専門家へのヒアリングを始めた。焦点となる退位の是非は、意見を述べた専門家5人のうち2人が賛成、2人が反対…

類型的な人間 〜11月の呟き

彼もまた、大抵の私たちと同様、罪──果して罪と言えるかどうか分からぬが──を犯すと、一旦は後悔しても、機会が与えられると、再び同じ罪を犯すのだった。気は短かったが、心はやさしく、寛大で、腐敗堕落した時代の人でありながら、人柄は誠実だった。夫と…

『魔太郎がくる!! 』の正義?

近頃、またしても「いじめ」問題で世間が喧しい。しかし、これはきわめて根深い、人類文明の古典的な問題であり、現代特有の問題としてクローズアップされている構図に少々違和感を覚える。 写真賞を受賞した作品に笑顔で写った数日後に自ら命を絶った青森の…

信じる者は救われる...かも 〜『イエメンで鮭釣りを』雑感

イエメンで鮭釣りを (エクス・リブリス) 作者: ポールトーディ,Paul Torday,小竹由美子 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2009/04 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 40回 この商品を含むブログ (34件) を見る 「あなたのジョーンズ博士にはコリンと一…

不毛地帯から。

ストーリーは難解で、テーマも稚拙な不毛な作家だったが、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなど同年代の作家の中では言葉を武器として戦うことのできる数少ない作家だった。 (村上春樹『風の歌を聴け』) 今年も村上春樹氏のノーベル文学賞受賞がささや…

「塊」としてのビートルズ 〜映画『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』雑感 〜

www.youtube.com 映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』公式サイト つい最近発売された「Live at Hollywood Bowl」の余韻に引きずられるように、先週、有楽町のミニシアターで『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』を観た。 1963…

夢と夢解釈 (講談社学術文庫) 作者: ジークムントフロイト,Sigmund Freud,金森誠也 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2001/09 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 身体的な事情があって、一昨夜より、熟睡が出来ない。 そのためか明け方にも…

「川と対話する」近所のフライフィッシング

ザ・フライフィッシング 作者: 森と渓流の会 出版社/メーカー: アテネ書房 発売日: 1987/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 暗闇でせんべいをを音もたてずに食べるのと、光のもとでバリッとやってはその表面の醤油の焼けぐあい、割れ口…

外来種としての稲

生物とその環境は共進化を、生物の一つひとつの変化が環境の変化をひき起こす原因であると同時に結果でもあったというのが正しい進化観である。内と外とは確かに互いに浸透しあっており、生物はその相互作用の場であると同時に、その産物なのである。 (中略…

The Beach Boys -- TODAY!

夏の終わりの一枚を選べと言ったら、僕はやはり『The Beach Boys - TODAY!』なのである。 学校で6時間も授業を受けたんだから、今日はもう十分さ。 ラジオのダイヤルをちょっと回して、いろいろとチューニングしてみる。 踊りたいんだ、今の気分にぴったり…

『コンビニ人間』を読んだよ。

『コンビニ人間』が掲載された文藝春秋2016年9月特別号。読書のBGMはKISS「DESTROYER」だ! 『コンビニ人間』読了。いやホントにこれは面白い小説だ。久々に(たぶん村上春樹『羊をめぐる冒険』以来)日本人が書いた純文学小説を読んで、心から「面白い」と…

「シドと白昼夢」

www.youtube.com 昔 描いた夢で あたしは別の人間でジャニス・イアンを自らと思い込んでいた現実には本物が居ると理解っていた(椎名林檎「シドと白昼夢」) 加山雄三からマーク・ボラン、デビッド・ボウイ、ジョン・レノン、 さらに、芥川龍之介、太宰治、…

靖国と天皇の「うれひ」

忘れめや 戦の庭に たふれしは 暮らしささへし をのこなりしを (昭和37年 昭和天皇御製) 忘れることができようか 戦争で死んでいったのは、家庭を支えた男たちであったことを…と詠んだ昭和天皇。 今からちょうど10年前の夏、A級戦犯が靖国神社に合祀され…

小林秀雄・岡潔『人間の建設』を読んだ。

●人間の建設 (新潮文庫) 小林 秀雄 /岡 潔 (著)先日の土曜日、ふらっと本屋に出かけた際、「新潮文庫の100冊」の中に、この『人間の建設』が入っているのを見て、「ほうっ!」と思い店頭で手にとって冒頭をぱらぱらっとめくってみた。オープニングはこうだ…

男はつらいよ!

おかしな男 渥美清 (ちくま文庫) 1961年の夏、小さな雑誌の編集長をしながらテレビやラジオに出ていたぼくはNHKのドラマで全国区の人気者になりつつあった渥美清と初めて会った。芝居や映画をよく観る勉強家であり、見巧者の彼と喜劇マニアのぼくは親しく話…